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IBC岩手放送

 
<ニュースエコー 2018年6月5日>
(江幡キャスター)
 人口減少社会の希望を探るシリーズです。6回目はこちらの本からご紹介します。私達のシリーズ「人口減少社会の希望」にもよく似た「人口減少社会の未来学」という今年4月に出された本です。

 思想家の内田樹さんが文明の歴史的出来事として人口減少問題を捉え、その未来について専門家に寄稿を依頼し、まとめた本です。その本の中で「都市と地方をかき混ぜ、関係人口を創出する」というテーマで寄稿しているのが、花巻市の高橋博之さんです。きょうはその高橋さんをスタジオにお迎えしてお話をうかがいます。よろしくお願いします。

(高橋博之さん)
 よろしくお願いします。
高橋博之さん
(奥村キャスター)
 花巻出身の高橋博之さんは2013年にNPO法人「東北開墾」を設立し、月刊誌「東北食べる通信」を発行。毎月、本と一緒にその月に特集した東北のこだわりの農水産物が付いてくるというユニークな取り組みは、グッドデザイン賞を受賞しました。

(江幡キャスター)
 まずお聞きしたいのは、この本に書かれた「都市と地方をかき混ぜる」「関係人口創出」…これはどういった考え方になるんですか。

(高橋さん)
 都市と地方が分断されて都市(の人口)がどんどん増えていって地方が少なくなっているという時に、今まで2つ言われてきたんですね。
 1つは「移住者を増やす」、これは定住人口を増やすっていうこと。もう1つは「観光(客)を増やす」、これは交流人口なんですけども、この間にもっと現実的な選択肢があるんじゃないかと。普段は消費地に仕事や暮らしの拠点を置きながら、継続的に生産地に関わり続ける生き方だったらできるという人は今増えているので、現実的な選択肢になるんじゃないのかなって思っています。
食べ物と「食べる通信」を一緒に届ける
(江幡キャスター)
 まさにそれが「東北食べる通信」の取り組み。そもそもきっかけは?

(高橋さん)
 7年前、東日本大震災の被災地にたくさんの消費者がボランティアとして来た時、「生まれて初めて漁師と農家に会った」「テレビでしか見たことない」って。これを聞いた時に僕、例えば難民を見て「同情するけど大変だな」とテレビ切ったとたんに他人事になる(ような印象を受けた)。これって知り合いがいないからなんですよ。なので他人事になるんですね。
 今、1.5%の生産者と98.5%の消費者が分断されていて知り合いいないんです。関わりがないので関心持てずに、生産地の疲弊に思いが及ばない。「食べる通信」で生産者の半生やこだわりをしっかり見えるようにして、食べ物と一緒に届ける、読んで食べて交流もできるようにネット上でしたら、そこで関わりや共感を持った人が関係人口に育っていったっていう事例はたくさん…(出てきた)。

(奥村キャスター)
 その「東北食べる通信」、節目となる60号を製作中です。

(江幡キャスター)
 これはきのう花巻市の住宅街にある一軒家にある事務所を訪ねた時の様子なんですけれども、60号で取り上げられるこちらの農家さんは何を作っているんですか?

(高橋さん)
 青森県の田子で、東京から帰ってきて、無農薬、無化学肥料でニンニク作りに挑戦している青年の物語です。

(江幡キャスター)
「東北食べる通信」の取り組みは全国的な広がりも見せていますよね。
「CSA」という考えを大切に
(高橋さん)
 そうですね、被災地であらわになった生産と消費の分断の問題は、実は構造的にどの地域も抱えていて、北海道から沖縄まで全国37地域、台湾でも4地域に暖簾分けみたいな形でこのモデルが広がっている。

(江幡キャスター)
 岩手でも大船渡市綾里と大槌町で。取り組みを進める中で「CSA」という考え方、運動ともいえると思いますが進めていらっしゃいますね。

(奥村キャスター)
「Community Supported Agriculture」の略ですが、具体例として、ニュースエコーでも先日取材した短角牛農家と消費者の関わりの力というのがあります。
短角牛農家 柿木さんの「山あげ」は消費者の関心も高かった
(江幡キャスター)
 こちらは久慈市山形町の短角牛農家の柿木さんが「山あげ」(放牧)をする様子ですけれども、短角牛自体、東北食べる通信でかなり早い段階で取り上げていましたね。

(高橋さん)
 2号目で特集させてもらって。みんな知らなかったですね。

(江幡キャスター)
 知ってもらうことによって、こういう広い牧場で育てられる牛に対する消費者の関心、食い付きっていうのは強かった?

(高橋さん)
 柿木さんの生き様や短角牛にかける思いに共感した読者が、柿木さんの抱える課題を柿木さんだけが考えるんじゃなくて価値を認めた消費者も一緒になって解決策を考えるみたいな、コミュニティに育っているんです。

(江幡キャスター)
 向こうからこっちに来たり、柿木さんが向こうに行ったりして。

(高橋さん)
そうです、行ったり来たり。まさに関係人口。

(江幡キャスター)
 モノの売り買いだけじゃなくて、困っていることに対してアドバイスをもらったりという部分、これが関係人口を増やすことによる…。

(高橋さん)
 そうですね、関わりのチカラですね。

(江幡キャスター)
 人口減少社会に向けた、生産地と消費者を結ぶ取り組みの話をうかがってきました。この問題に向き合っていくヒントを、最後に高橋さんに書いてもらいました。
「ツルツルからゴニョゴニョへ」
(高橋さん)
 今の社会が抱えている問題は次の社会への扉だと思っていまして、人口が増えていった時代に人と人との関わりがどんどん薄れて生産者と消費者の関係も「ツルツル」になって無関心になったんですね。これをチャンスととらえて人と人との関係を「ツルツル」から「ゴニョゴニョ」の関係に変えて、そこで「摩擦熱」を生んで社会の活力を維持していくのは、僕は十分に可能だと思っています。

(江幡キャスター)
 例えば短角牛農家でも米農家でも、困った時に「ゴニョゴニョ」した関係だと相手が心配になったりしてね。

(高橋さん)
 そうです、他人事じゃなくなる。

(江幡キャスター)
 岩手はこの「ゴニョゴニョ」得意な気がします。

(高橋さん)
 もともとあるんです、「おすそ分け」みたいな。それをもっと広範囲で、価値を認めた人が新しいコミュニティ作ってやっていくっていうイメージ。

(江幡キャスター)
 岩手の良さを生かした人口減少への向き合い方、大きなヒントをいただいたような気がします。高橋博之さんにお話をうかがいました。ありがとうございました。

(高橋さん)
 ありがとうございました。
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