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「最大の防災は地域コミュニティー」この言葉を旗印に災害に強い地域を作ろうと奮闘する町内会長がいます。岩手県大槌町安渡(あんど)地区・震災10年目の姿です。

 大槌町安渡地区。大槌川の河口に沿った埋め立て地と谷筋にかつて800世帯1800人余りが暮らしていましたが、津波は地区のほとんどを浸水させ、死者・行方不明者は地区住民の11%を超える217人でした。

(安渡町内会・佐々木慶一さん)
「いま見えているこのレベルの家は全部新築ですね。土地もかさ上げしています」

 安渡町内会会長の佐々木慶一さんです。甚大な被害を受けた安渡地区でかさ上げや切り土によって被災地に新たな宅地が整備され、家の再建が始まったのはおよそ2年前。高さ14.5mの防潮堤も今年度中に完成見込みで、今年5月末現在、310世帯600人ほどが暮らしています。

 先月28日、安渡地区で年に2回の一斉草刈り作業が行われました。

「町内会です。終わったらどうぞ」

佐々木さんは町内会長として目を配り、激励します。

(お住まいはこのあたりですか?)
「すぐ、そこです。同じとこで(家が)流されて、ようやく帰ってきました。元の人たちがほとんどなので、そんなに違和感はないです」

 佐々木さんが地域を回るのは、参加者へのねぎらいだけが目的ではありません。

(安渡町内会・佐々木慶一さん)
「遠くまで行って無理しないで。落ちたら大変だ」

 この辺りは津波の影響を免れた家と、かさ上げした土地に新たに越してきた人が混在している地域。

(新しくご近所になられた?)
「そうです。もう知っています」
(もしまた大きな揺れが来たらどうしますか?)
「みんな一緒に逃げますよ、山に。声かけてみんなで逃げます。それしかないもんね」
地区の津波避難訓練=要支援者はリヤカーで避難(2019年3月)

いざという時の助けは、隣近所のつながり


 震災発生から9年、ようやく安渡地区に住民が戻り始める中、家が残った人と再建した人との連携を知る上で、こうした町内会活動は絶好の機会なのです。

(安渡町内会・佐々木慶一さん)
「最大の防災は地域コミュニティーだと思っています。いざという時には困っている人を助け合える環境を作ることは大事だと思う」

 災害が大きければ大きいほど、救助の手が届くのには時間がかかる。隣近所とのつながりはいざという時のセーフティネットと考えています。その一方で…。

(安渡町内会・佐々木慶一さん)
「有事の場合には自分の命も助けようとする人の命も危険にさらされる、ということを自覚した上での共助が求められると思います」

 東日本大震災の際、消防団、民生委員、隣近所、さまざまな立場で誰かを助けようとして犠牲になった人も多くいました。

 そこで地区が取り決めたのが『15分ルール』。安渡地区が震災後に定めた地震発生から15分以内で避難誘導を終えるというもの。手助けが必要な人は、支援者の負担と危険を減らすため自分で玄関先まで出て助けを待つなど、できる範囲で努力することも求められ訓練を重ねてきました。
マンションタイプや戸建ての災害公営住宅が整備された安渡地区東部(岩手県大槌町)

一人暮らしの高齢者をどう守っていくか…


 草刈り作業も終盤。マンションタイプや戸建ての災害公営住宅が多く建つ安渡地区東部に足を運びました。

「終わったら、お茶飲んでください。この辺に置いておきます」
「いつもこうだが、これからみんな年取っていくのに」
「だから、年寄りが多くなったから大変ですよね」
(ご年配の方が多いですか?)
「ご年配(笑)83歳です。去年より今年また(参加する)人が少ないよ」
「どこに誰いるかわからなくなった。都会並みになった。こんなのに出れば、顔見知りになって話しながらできるんだけど」

 他の地区と比べてコミュニティーの構築が上手く進んでいないようです。

(安渡町内会長・佐々木慶一さん)
「交流しやすい地域だと思うんですけど、濃淡がありますね。高齢の一人暮らしの人が多い地域の交流は気になりますね」

 震災10年目に直面するコミュニティーの課題。しかし、佐々木さんはまだ過程に過ぎないと考えています。

(安渡町内会長・佐々木慶一さん)
「日々年を追うごとにレベルアップしていくと思うんですけど、これまでの10年を考えると、コミュニティーの輪ができるのは早くて(あと)5年」

 ハードの整備が終盤を迎える被災地で、支援する人、支援される人、双方の命を守るため、ソフト面ではどのような整備が求められるのか模索が続いています。
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