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今年秋に行われるラグビーワールドカップの会場の一つ、岩手県釜石市の鵜住居地区では、公共施設の整備が相次いでいます。復興という目的の一方で、この地区に集中して建てられる施設に「地域との関わりが見えない」と、住民からは心配する声があがっています。

(キックオフ宣言)
「このスタジアムはたくさんの感謝を乗せて、きょう未来に向けて出港する」

 去年8月、アジアで初開催となるラグビーワールドカップの試合会場「釜石鵜住居復興スタジアム」がオープンしました。釜石市はこの鵜住居地区に、ラグビー場の他にも公共施設の整備を集中的に進めています。

 津波の犠牲者を追悼する「釜石祈りのパーク」。震災を後世に伝える「いのちをつなぐ未来館」。観光交流の拠点となる「鵜の郷交流館」。これに市民体育館を加えたエリア全体を「うのすまい・トモス」と名付けました。「復興の明かりを灯す」願いが込められています。

(釜石市震災伝承室・臼沢渉室長)
「コンセプトについては、ひとことで言うと震災の教訓を伝える場ということが大きい」

 市民体育館を除く3つの施設は、大震災から8年となる来月、3月11日に公開される予定です。
震災8年となる3月11日に向け、鵜住居地区では追悼施設などの整備が進む

進むハード整備の一方で・・・


 今月5日、それぞれの施設のあり方を議論してきた4つの委員会のメンバーが集まり、まとめの会合が開かれました。

(野田武則市長)
「秋にはワールドカップですから、時期を見ながらきちんと整備を進めていきたい」

 市長の決意の一方で、会合の中では委員から不安の声が上がりました。

(祈りのパーク検討委員会・佐々木雄治委員)
「私たち地元として心配するのは、できた施設をどうやって管理運営していくか、地元の人間はどこまで関わっていくか。私たちができるのはどこまでなのか、不明なところがある。具体的にどう進めるのかが、私たちにはわからない」

 公共施設と地域の関わりについて意見を述べたのは、祈りのパークの委員を務める鵜住居町の佐々木雄治さんです。

 市は施設の管理運営を、市長が社長を務める第3セクターに委託する計画で、鵜住居地区に関しては「参画を促す」と言うものの、具体的な内容を未だ示していません。佐々木さんは「施設の運営に地元が積極的に関わるべきだ」と考えているのです。

(祈りのパーク検討委員会・佐々木雄治委員)
「自分たちが考えられる最善のものを、何とか知恵を出してやっていきたい。試行錯誤しながら、ひとつずつ前に進めていければ」
家族4人を亡くした佐々木雄治さん「鵜住居の住人だからこそできる役割がある」

被災地・被災者だからこそ


 鵜住居地区は東日本大震災で甚大な被害を受けました。死者・行方不明者は580人。釜石市全体の犠牲者のおよそ6割を占めます。中でも160人以上が犠牲になったと推測される鵜住居地区防災センターでの、避難をめぐる悲劇は、人々の心に深く刻まれました。新たに整備される施設は、その防災センターがあった場所に建てられます。

 委員会で心配の声をあげた佐々木さんが暮らすのは、釜石・鵜住居町の根浜地区です。佐々木さんは妻と父ら、津波で家族4人を亡くしました。震災後はゲストハウスを開設し、まちづくりの議論を進める地域の中心的な役割を果たしてきました。津波で多くの犠牲が出た鵜住居の住民だからこそ、できる役割があると考えています。

(祈りのパーク検討委員会・佐々木雄治委員)
「きちっと防災意識を持ってもらったり、教育なり訓練をして、自然災害はいつでも起こりうるわけだから、そういう取り組みに我々被災者が直接携わる。自分たち被災者だから言えることがいっぱいあると思う。それが我々の仕事だと思う。被災者だからこそできる役割だと思うんです」
整備される公共施設 住民はどう関わっていけるのか

震災から8年 「復興」とは何か?


 震災から間もなく8年。ハードの整備は計画の終盤を迎えたとは言うものの、鵜住居はいまだ復興の途上。街には空き地が目立ちます。そんな中で、大規模な公共施設が集中して建設されることに、住民は期待とともに不安を抱いています。

(鵜住居地域会議・花輪孝吉議長)
「100パーセントの方が賛成してるわけじゃない。そこまでやる必要はないという方もいます。まずできるモノができて、それから人を集めるという考えの方も多い。私もそう思う。何もないところには人が来ない」

 こうした様々な声に釜石市は。

(釜石市震災伝承室・臼沢渉室長)
「地域の人たちが集ってほしい。利用してほしい。そういった中から自分の経験をその場で話したり震災のことを語ったりしてほしい。そういう積み重ねで施設に魂ができていくものと思う」

 震災で甚大な被害を受け、そして進む、鵜住居の新たなまちづくり。そのシンボルとして、この地区に集中して整備される公共施設。震災の記憶と教訓を、住民が納得する形で伝え、にぎわいにどう結びつけるのか? そこに住民はどう関わればよいのか?真の意味でハードとソフトをつなぐために…。被災地の抱える課題が重くのしかかっています。
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