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震災で失われた人と人とのつながりを、郷土料理をきっかけにもう一度育もうという取り組みが、岩手県大槌町で行われています。懐かしいふるさとの味は被災した人たちを前へと進める原動力になっています。
(集会所の厨房で料理を作る女性たち)
「(これは何ですか)けんちん汁、こまごま汁とも言うし、大槌は豆を入れるんですよ。(地域によって作り方は?)違います違います。(どういうときに食べる?)うちの方は小正月料理」

 1月12日の土曜日、大槌町で行われた「食の文化祭」です。

「生アワビが少しだよ。1個入れただけだよ」
「あ、ちゃちゃんがちゃん!わははは」

 大槌町臼澤地区の集会所で女性たちが調理しているのは、地域に伝わる郷土料理の数々です。干し柿が入った「柿なます」、へその形の「へっちょこ団子」。

「寝ないで作りました。食べてもらいたいと思って。ワクワクするんです」

 これらの料理をお目当てに、集会所に人々が集います。津波で被災した海沿いの地区から、ここ臼澤地区に移り住んできた人たちです。
住民をつなぐ新たな試み 料理の準備にも熱が入る

新住民と郷土料理で交流


 津波の被害を免れた内陸の臼澤地区には、震災後、新たに住宅地や復興住宅が整備されました。震災前、120世帯ほどだった地区は、今年3月には400世帯を超える見込みで、人口は増え続けています。

(臼澤自治会・東梅英夫会長)
「知らない人が通る、用心しなくてはならないという空気多かった。それを早い段階で解消できるようにするには、地域の集まりを工夫しながらお互いに会話できる関係にするのが大切なこと」

 そこで注目したのが、大槌町に伝わる郷土料理でした。同じ料理でも地域によって呼び方や作り方が異なることから、知らない人同士のコミュニケーションのきっかけになると期待して、今回、県の「心の復興事業」によって初めて「食の文化祭」が企画されました。

「はい、いただきまーす!」「いただきまーす!」
「『すすり団子』、他所では『へっちょこ団子』ともいうけど、うちでは『すすり団子』」

 地元のお母さんたちの温かいもてなしと懐かしい味が、もとからの住民、そして移り住んだ人たちの心を解きほぐしました。

(参加した住民)
「感謝、感謝ですね」
「みんないい人たちばかりで、何にも心配ないね。いつもお茶会にも参加しているし」「たいへんありがたく思っています。私たちは『よそ者』だから。安渡地区からここにいついた。ここにきて4年目かな」
様変わりした街並み しかし郷土料理の味わいは変わらない

懐かしい味が心をつなぐ


 一方、こちらは津波で被災した旧市街地、町方地区です。震災後は人口減少に拍車がかかり、整備されたまち並みには空き地が目立ちます。まちの中心部で自転車屋とカフェを営む、内金崎さんの家族です。食の文化祭を翌日に控え準備に大忙しです。


「キラズ団子だね、この辺でいうね」

 作っていたのは、この地方の小正月には欠かせないという豆腐のオカラを使った「キラズ団子」です。

「我が家は塩味なんですよ」
(お嫁さんは吉里吉里と伺いましたが?)
「私は吉里吉里で、お砂糖とゴマが入った甘い方ですね」

 キラズ団子…オカラと米粉を混ぜたものをピンポン玉ほどの大きさの団子にします。商売繁盛を願う小判の形にしたり、豊作を祈って臼の形にしたりと、各家庭によって様々です。ミズキの木に刺して飾った後で、焼いて食べるといいます。

(金崎陽子さん)
「何かの折に思い出しては作ると、こうだったなああだったなと昔を思い出す。地区の人がばらばらになったけどこの話を聞いた人は出てきて、昔を懐かしんだりして一緒に食べたい」

「これは『ガンヅギ』だな。大根だっけがな?奥は大根だった」

 会場の公民館にはこの日を楽しみしていた多くの町民が集まりました。

(町方食の文化祭実行委員会・内金崎大祐会長)
「きょうは三陸道の道がつながりましたけど、ここは町方の方々の心と心がつながる」(会場からいいぞ!の声)
「それではいただきます」「いただきまーす」
「美味しい!」

 会場で久しぶりに会ったという人も多く、皆で食べる懐かしい味に会話が弾みます。

(参加した人)
「いいですね。じっと家にいたって足がダメになってくるから」
「これを作っている人が昔からお店をやっている人なんだけど、まさかいると思わないから。やっぱり会いますよね、ここに来るとね」

(町方食の文化祭実行委員会・内金崎大祐会長)
「これがきっかけで皆さんの顔を知ることができて挨拶できるように…コミュニケーションができていけば」

 東日本大震災で様変わりしてしまったまち並みとは裏腹に、今も変わらずに残る郷土料理。懐かしいあの味が、離れ離れになってしまった人、そして心をしっかりとつないでいました。
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