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三陸の海の幸が半年ぶりの復活です。貝毒により出荷を自主規制していた岩手県大船渡市三陸町のブランドホタテ「恋し浜ホタテ」が10月、出荷を再開しました。海を取り巻く環境は未だ厳しいままですが、復興へとつながる生業の再生に向けて漁家たちの奮闘が続いています。
 大船渡市・旧三陸町の小石浜地区。入り組んだリアス式海岸の地形を活かして、ホタテの養殖が盛んです。午前3時半。夜も明けぬ真っ暗な漁港を、1隻の漁船が出港しました。地元のホタテ養殖漁家松川高祥さん(38)です。貝毒のため4月下旬から見合わせていたホタテの出荷を先週再開しました。

(松川さん)
「4月後半以来、本当に半年ぶりなので、何か懐かしく感じます」

 貝柱が太く、濃厚な甘みが人気の小石浜のホタテは、「恋し浜ホタテ」としてブランド化されましたが、津波により全滅。その後、新たに稚貝を育てたりして地域を挙げて復活への取り組みが続いていました。津波から7年、ようやく軌道に乗り始めた時に起こったのが貝毒でした。

 貝毒とは貝が持つ毒のことで、麻痺や下痢などの中毒症状の毒素を持つプランクトンを貝がエサとして食べることで貝の中に毒素がたまり、発生します。小石浜を始めとする沿岸南部の多くの海域では、今年春から、この貝毒のため出荷が自主規制されてきたのです。
ホタテの大量死に表情が曇る松川高祥さん

「貝毒」「大量死」相次ぐ試練


 それから半年。週1回行われる検査で3週連続で基準値を下回り、恋し浜ホタテの出荷が再開されました。これまでも初夏に1~2カ月の出荷規制はありましたが、半年間に及ぶ出荷見合わせは、小石浜でホタテ養殖が始まって以来、初めてのことです。松川さんの家ではホタテが収入のおよそ6割を占めており、この半年間は釣り船や小型の定置網などで生計を立ててきました。

 その待ちに待った水揚げですが、なぜかいま一つ浮かない表情です。中身が空っぽのホタテ貝が時折見られるのです。「へい死」といわれる現象で、海の中でホタテが死んでしまい、空っぽの貝殻だけが残ってしまうのです。原因はよく分かっていません。一本のロープに耳吊された50枚のホタテのうち何枚が生き残っているのか?水揚げするまで松川さんにも分かりません。

(松川さん)
「きょうのはあんまり良いほうではないですね。(50あったウチの)50あったうちの20か30くらいまで落ち込んだ感じですね」

 これまでも一定量のホタテの死滅はありましたが、ここまで多くはありませんでした。震災からの復活のさなかで半年間、水揚げを見合わせた上に今度は4割近くにのぼるホタテの大量死。どの程度の収入減になるかまだ見込みはつきません。それでも松川さんは前を向いています。

(松川さん)
「生き残ったくらいですから中身も大きくなって、すごく大きいホタテになりましたね。(一枚一枚が貴重ですね)そうですね。こうなってくると、一枚一枚は今までと違って一杯あるわけではないので、一枚一枚大事になってきます」

 困難をのりこえ、立派に成長したホタテを、松川さんは大切に取ります。
試練を乗り越え、半年ぶりに自慢のホタテを出荷

「恋し浜ブランド」を守り抜く


 朝5時半。漁港の荷捌き場に生産者たちが集まりました。松川さんも加入する小石浜の養殖組合は共同の出荷作業と徹底した品質管理で恋し浜ブランドを守りぬいてきました。

 恋し浜養殖組合の佐々木淳さん(47)です。恋し浜ホタテを通した消費者との交流を進める中心メンバーです。

(佐々木さん)
「(お客さんから何か声を届けられたりしましたか?)待ってました、待ってました。嬉しいですね」

 半年間の出荷見合合わせと、大量の貝の死滅。小石浜の漁家を取り巻く状況は今なお過酷ですが、それでも、自慢のホタテを届けられる喜びを皆で噛みしめているようでした。

(佐々木さん)
「忘れられてしまうんではないかと、そんなことも考えたんですけどね。そんな感じは全くなくてですね」

 実は出荷の見合わせ中、漁家たちや漁協には出荷を待ちわびるメッセージが多く寄せられていたのです。

(SNS画面)
「貝毒抜けてからでいいので送ってもらえますか?」
「3週連続クリアも厳しい設定なんですね」
「安心・安全も一緒に出荷してするのでどうしても厳しくなるんですよ」

(佐々木さん)
「早く復活して、早く食べたいというメールがものすごい量だったんですよね。そっちにもまた『お待たせしました』って返事書きたいですし」

 ホタテの質にこだわる生産者とそれを応援する消費者。信頼関係を守るために安全安心に徹した姿勢。その絆は、共に待ちわびる半年間に更に強くなりました。

(松川さん)
「今まで半年間、何もなかった分、チョットは安心した感じですかね」
(佐々木さん)
「自然界にたまにある予測できない状況ごと、末永くお付き合いいただきたい。『よろしくお願いします』ってことですかね」

 豊かな恵みも予期せぬ変化も、三陸の自然がもたらすもの。津波被害から立ち上がった小石浜の漁師たちは、新たな試練にも真正面に向き合っています。
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