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岩手県大槌町の仮設商店街で、9月22日、人気の食堂が惜しまれながら暖簾を下ろしました。仮設店舗の集約化に伴い9月末の退去期限を前に「閉店」を選択したのです。その食堂の仮設での7年間を振り返り、最後の一日に密着しました。

  大槌町の内陸部に建つ仮設商店街「わらびっこ商店街」で食堂を営む、高橋勝子さん(74)です。震災発生から8回目の誕生日を迎えました。

 一番人気は一杯400円の中華そば。たっぷりの煮干しを使った透き通ったスープと沿岸特有の細めの縮れ麺。大槌の中心部から車で15分もかかる距離ながら多くの人が食べに訪れます。

 高橋さんは9月22日を最後に、震災前から32年間続けた店をやめることにしました。大槌町ではなりわいの再生に伴う復興まちづくりの進捗に伴い仮設商店街の集約を進めていて「わらびっこ商店街」でも今月末までに退去するよう経営者側に求めていました。

(高橋勝子さん)
「(Q.いろいろ迷いましたか?)ううん、別に迷いませんでしたね。私は。ここで終わりって決めてたからね」
調理する高橋勝子さん 本設での営業再開は断念した

仮設店舗は震災後の人生そのものだった


 およそ9割の事業者が被災した大槌町では、2011年12月に町内7か所に仮設商店街を建設。90の事業者が仮店舗での営業を再開しました。それからまもなく7年…。高橋さんは仮設商店街を取り巻く環境の変化を感じています。

(高橋さん)「最初の頃はやっぱりボランティアさんが多かったために、この山の中まで、不便なところでしょ、そこまでお客さんが来てくれてね。やっぱりだんだんとね、皆いなくなっていくでしょ。そして仮設自体が引っ越しになっていくから」

 復興が進む中心部と離れて建つ内陸部の仮設商店街。この1年間でも3つの店舗が町方と言われる町の中心部に本設店舗を建設しこの仮設商店街を後にしました。

 高橋さんは当初、町で構想が持ちあがった集合店舗が整備されればそこに入居したいと考えていました。

(高橋さん)
「ハモニカ式みたいな感じで店(共同店舗)をあっち(町方)の方に造るっていってたから、いいかなと思ったけど。やっぱり年々遅れていって、そうなるとやっぱり無理かなという気持ちになりますよね。なんでもその通りいかないからね」

 しかし、集合店舗の計画は事業者の意向が一本化されず、とん挫しました。資金面での不安もあり高橋さんは本設での再開を断念しました。

 午前10時、開店と同時に客がやってきました。

(お客さんと・・・)
「なんか最近、並んでるというから、今日は朝イチでこないとダメかなと思って」
「ここだってやめると言えば、みんな来てくれるんでしょ」
「もったいないね、やめるなんて」

 震災前と変わらぬ自慢の中華そばと、飾らない高橋さんの人柄。閉店の話を聞きつけ、わらびっこ商店街には客足が途絶えません。

 土日もなく店を開け続けた高橋さん。店は震災後の人生そのものでした。

(高橋さん)
「やっぱり来なきゃ、来なきゃと思って。やっぱり朝起きればね。ハリはあったよね。生活にね。(店がなければ)全然違った人生でしょうね。そうなったらね。部屋に籠っていたか、それとも。どうなんだかね」
大勢の客で賑わった最後の日、暖簾を下ろす高橋さん

最後の営業日 仮設から新しい生活へ


 最後の営業日となった今月22日。この日は混雑を予想して、宮城県から二人の息子が手伝いに来てくれました。
 
 常連客の佐藤直子さんです。わらびっこ商店街で美容院を営んでいましたが、今年春、中心部の本設店舗に移りました。

(佐藤直子さん)「一緒に7年間やってきたから。今日が最後だと思うと、感謝の気持ちが一杯になって涙が出てくる。(最後の一杯のお味はいかがですか?)とても美味しいです。7年間の共に支えられて、助けあいながらの重みがこの一杯に凝縮されています」

 売り切れも売れ残りも出すことなく、いつもの2倍用意したスープがなくなりました。

(暖簾下ろす)

 未曾有の大震災、そして長すぎる復興への道。現在74歳…。翻弄され続けた高橋さんの仮設店舗での7年が終わりました。

(高橋さん)
「そんなもんでございました。(終わりましたね)終わりました」

「毎日働くのが当たり前」という日々を送ってきた高橋さん。これからは今まで出来なかったことをやりたいと考えています。
 
(高橋勝子さん)
「まあね、色んな事やりたいとは思ってますけども。まずみんなそれぞれ家建てたりしたけれど、自分の周りの人とか親戚の人なんかも遠くの方に家建てたりしてるでしょ。そこへ訪ねていくのもいいかと思ったりしてますけど」

 現在、仮設住宅に暮らす高橋さんは間もなく町の中心部の災害公営住宅に引っ越します。仮設店舗、仮設住宅の両方に別れを告げ全く新しい暮らしが始まろうとしています。
 
 大槌町では本設移行が間に合わない23の事業者に限り町の中心部の復興きらり商店街に集約させ、それ以外の仮設商店街は9月末までに閉鎖する予定です。なりわいの再生に向けて復興が進む中、事業者たちは今、大きな選択を迫られています。
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