X 
IBC岩手放送ホームページでは、広告・番組情報配信、閲覧履歴解析等のためにクッキーを使用しています。このお知らせを閉じるか閲覧を継続することで、クッキーの使用をご承認いただいたものとします。オプトアウトや詳細についてはIBC岩手放送「サイト規定」をご覧ください。

IBC岩手放送

 
 第二次大戦のナチスドイツによる強制収容を生き抜いた精神科医・フランクル。このフランクルの著作「夜と霧」を元に「生きる」意味を伝えている岩手県陸前高田市の男性がいます。震災から7年半、被災者が再び前を向くために開かれている「読書会」を取材しました。
(朗読)
「あたかも今が二度目の人生であるかのように、生きなさい」
「実際には、人生は二度ない。それでも、一度目は簡単な方を選んだり、長いものに巻かれたり、決断できなかったとしても、二度目だったら?」

 18日、陸前高田市で開かれた読書会です。参加者は全員で本を朗読した後、自身の思いを語ります。

「自分は家内を震災で亡くしたんだけど、なかなか切りかえれなかったっていうか、またもう一回リスタートって、新たな人生って、やっぱりそれまでのしがらみもあったりとか家族もあるから」
「私も震災きっかけだね、知り合いなんかいっぱい亡くなったでしょ、その次の年にうちの夫も亡くなったでしょ、で全く一人になってしまったわけ。一人になった場合、どうやって生きたらいいのかと。そうするとせっかく生きているのだからみんなと一緒にとにかく明るく楽しく生きていきたいなっていう思いが強くなったのね」
ヴィクトール・フランクル「夜と霧」 強制収容所の中で見出した「生きる意味」が綴られている

フランクル「夜と霧」が説く「生きる意味」


 参加者が読んでいる本は…ユダヤ人精神科医、ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」です。フランクルはナチスドイツによる強制収容所での生活を「心理学者による強制収容所の体験記」として記し、苦しい生活を生きぬく中でフランクルがフランクル自身を実験台にしながら見つけ出した「生きる意味」を綴りました。

 読書会を立ち上げた石木幹人さんです。石木さんは医師です。フランクルの本をはじめて手に取ったのは学生時代でした。

(石木さん)
「ずいぶん影響されたんだなって。『創造価値・体験価値・態度価値』っていうので言えばね、影響されたなーって」

 創造、体験、態度とはフランクルが説いた3つの「人生の価値」を見出す行為のことです。仕事や趣味など、何かを生み出す「創造」。出会いや別れ、人を愛するなどの「体験」。そして、人生に対して己が取る「態度」―。人はある日、突然、仕事も、愛する人も失う可能性がある。その状況に対してどういった態度を選ぶかで、人は人生の価値を見出すことができる。「自分自身が人生に絶望しても、人生は自分に期待することをやめない」、こう説いたのです。

 石木さんは震災後、ふと目にした新聞記事がきっかけでフランクルに再会しました。

 「フランクルの『夜と霧』の新訳が出たよっていう話がその(新聞)記事の中からわかって。こういうとんでもないこと(大震災)が起こったあとで、生きる意欲だとか意味だとかっていうことに絶望している人たちが山のようにいるような、そういう状況の時にすごくタイミング良く記事が出たもんだなと思って」
病院長だった石木さんは、患者やスタッフと病院の屋上で一夜を過ごした

被災した県立高田病院の屋上で…


 震災当時、石木さんは県立高田病院の院長でした。

(県立高田病院は屋上を除く4階まで津波が押し寄せた)
(職員12人、入院患者15人が津波の犠牲に)
(石木さんは他の患者やスタッフと屋上で一夜を明かした)

(石木さん)
「とにかく夜が明けてくれないかなっていう思いがあった。とにかく患者さんだけでも日中にはどこかに安全な場所に移らなきゃ」

 祈るようにして迎えた翌朝、目にした景色を石木さんは今も忘れられません。

 「被災したその日ですよね、その次の日のね朝日がものすごくきれいだったのよ。要するに…曇りでなくて雲がある状態の朝を迎えて、朝日が上がってきて明るくなってくるのがね」

 石木さんは「夜と霧」の中に似た場面を見つけました。

 「(略)今まさに夕焼けの茜色に照り映えているザルツブルクの山並みを見上げて、顔を輝かせ、うっとりとしていた」
 
 フランクルが、収容所に向かう護送車から見た景色でした。
読書会では「夜と霧」を皆で2回読み終えた

読書会で得られた「手ごたえ」


 読書会を立ち上げて4年半。皆で「夜と霧」を2回、読み終えました。

(参加者)
「『夜と霧』っていうこういう本に出会ったということはすごく自分の生きる道っていうか、苦しいことでも乗り越えられるっていうような気持ちになれた」

「(自分の苦しみは)大した事じゃないんじゃないかと、私も83歳ですけど、まあ生きているうちはもう少し頑張ろうやという勇気をもらったような気がします」

 石木さんは読書会の手ごたえを感じています。

(石木さん)
「予測もしない理不尽な体験っていうことですよね、被災っていうのは。そういう中で『夜と霧』に出会うっていうのはすごく、ある意味では癒されるみたいなところはあるのかなという思いはあります」「まあ出来ればずっと続けていければいいなと思いますけども」

 陸前高田にすこしずつ根を張るフランクルの言葉。石木さんはこれからも復興が進む被災地で生きる意味を伝え続けます。
×