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岩手県花巻市に震災発生後、被災地の妊産婦を支える活動を続けてきた助産師の女性がいます。女性の思いは母親と母親をつなぐ、助け合いの大きな輪となっています。

 花巻市にあるケアハウス「まんまるぽっと」です。産前産後の女性のデイサービスや、育児相談などを行っています。
 施設を運営するNPO法人「まんまるママいわて」の代表理事、看護師で助産師の佐藤美代子さん39歳。2児の母でもあります。県立久慈病院で勤務経験がある佐藤さんは、震災で沿岸被災地への思いが強くなったといいます。

(佐藤さん)
「(震災時)花巻の自宅にいた3歳半の子どもと、5か月の娘と3人で家の和室にいた。もともと沿岸の病院で働いていた。先輩後輩、海側に住んでいる友だち、親せきの顔がばーっと思い浮かび、医療者の自分がここ(花巻に)いていいのかと焦燥感を覚えた。妊産婦のため内陸で何かできることはないか…」

 震災発生後、佐藤さんを中心とした助産師有志のボランティアは、花巻の温泉宿泊施設に連絡を取り、妊産婦の受け入れ態勢を整えました。
 佐藤さんは生まれたばかりの長女を連れ、被災地の病院や市役所を回りチラシを配布して、妊産婦のサポートができることを知らせました。そして2011年の4月から8月まで、釜石市と大槌町の妊産婦とその家族7組、合わせて34人の内陸避難者をサポートしました。

(佐藤さん)
「(妊産婦は)特にホルモン状態が、ジェットコースターみたいに上がったり下がったりする。普通にしていても、ただ涙が出てきたり幸せな気分になる時期なので、繊細なケアが必要」
「サポートがあって初めて不安を話すことができた」

サポートを頼って無事出産


 当時の入所者の一人で、現在「まんまるママいわて」の副代表を務める佐々木一愛さんです。北上市に住む佐々木さんは震災当時、妊娠6か月で大槌町の実家で被災しました。およそ2か月の間、避難所生活を送ったあと、花巻の親せきの家に避難しました。

(佐々木さん)
「(自分より)たいへんな人がいるから思ってしまって、お腹が張ってたりとか妊娠してますと、避難所で言わなければいけなかったが、スタッフに言えなかった」

 佐々木さんは花巻に避難する前に妊産婦受け入れ事業の情報を聞き、予定日の1週間ほど前に、佐藤さんのサポートを頼って無事長男を出産。その後も1か月ほど生活しました。

(佐々木さん)
「健考館では助産師さん(佐藤さんたち)が話しを聞いてくれて、妊娠とか出産とか産後のこと、初めて不安を全部しゃべった」

 自ら経験したサポートをきっかけに、佐々木さんは産前産後ケアの大切さを伝えようと現在、佐藤さんといっしょに働いています。

(佐々木さん)
「(佐藤さんは)パワーをもらえてお日様みたいな人」
サロンでは母親がゆったりした時間を過ごす

「まんまるママいわて」を立ち上げ県内8市町で活動


 花巻での妊婦受け入れ事業終了後、佐藤さんは被災地に戻った妊産婦と家族の支援がしたいと、2011年9月、任意団体「まんまるママいわて」を立ちあげました。そして釜石や宮古など、沿岸を含む8つの市と町で、育児サポートのサロンを設置しました。任意団体は去年NPO法人となりました。この日、佐藤さんは北上市内でまんまるママのスタッフと合流し、開設以降7年間通い続けている、釜石のサロンに向かいました。

(佐藤さん)
「(釜石サロンは)毎月1回やっている、お母さんたちの子育てサロン。お茶を飲んでおしゃべりをして、赤ちゃんの相談をしたり、お母さんたちに会えるのを楽しみにしています」

 釜石に到着した佐藤さんらは休む間もなく、地元の助産師3人を含むボランティアと会場の準備をします。午前10時、続々と親子がやってきます。この日は12組の親子が参加して、サロンがスタートしました。参加者は子どもの面倒を見てもらいながら、地元のボランティアが作ったおやつを食べたり、子育ての相談をしたりして、ゆったりした時間をすごします。

(参加者)
「日中は子どもと2人っきり。どうしても煮詰まってしまう。こういうところに来ると、子どもも私もリラックスできる」

 この日初めて参加した親子もいましたが、佐藤さんは人と人とのつながりができるようにと、参加者全員に意識的に話しかけます。
「このあとも継続した支援を」と語る佐藤美代子さん(右)

母親たちの「支援の循環」が広がりはじめた


 NPOの自主的な事業だった釜石のサロンは活動が認められ、今年度、市の委託事業になりました。そしてケアを受けた母親たちが、新たな母親たちを支える「支援の循環」がうまれています。釜石在住の阿部千恵さんは、出産した4年前に初めて釜石サロンを利用しました。現在は運営スタッフの1人としてここで活動しています。

(阿部さん)
「(2014年に)産後9か月で初めて利用者としてきた。助産師にがんばってるねと声かけてもらって、元気とか勇気もらった」

こちらは釜石在住の助産師、高橋桂さん。釜石サロン設立当初からボランティアで参加し、現在は去年、生まれた長女を連れて利用者として通っています。

(高橋さん)
「佐藤さん、ありがたい。7年も継続するのは大変。感謝しかない。(今後は)私も継続してスタッフとして関わって行きたい。(子育て落ち着いたら)地元のお母さんたちの力になりたい」

(佐藤さん)
「どんどん(まちが)新しくなっているのを見ながら当時、赤ちゃんだった子たちが、小学校に入ったのを見て7年たったんだと思う。(工事関係者など)被災してない人が増えてきた。いずれ私たちが来なくても、今の形が残るようにしていきたい。(一過性の)復興支援ではなくて、継続した母子支援としてサポートが必要」

 妊婦や母親たちにとって、何でも安心して相談できる女性が周りにいるサロンは、心の寄りどころにもなっています。佐藤さんの思いが、地域を支える支援の輪を広げています。
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