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震災後、シリーズでお伝えしている「仮設住宅は今」です。58回目は、津波で家族3人を失った、岩手県大槌町の元消防団長の男性を取材しました。

 かつての小学校の校庭に建てられた仮設団地。この部屋で1人で暮らす、煙山佳成さん(79)です。40代の長女は結婚して仙台にいます。趣味はカメラ。映し出されているのは、前日に撮った敷地内の夜桜です。強い風で枝が揺れ、撮影には苦労しました。

(煙山さん)
「あの瞬間が良い。車が通るから、その光が。瞬間、光る。予期しない瞬間が面白い」

 遺影は妻、昌子さん、義理の母、タマさん、長男、隆之さんです。消防団長だった煙山さんはあの日、昌子さんが用意した半纏を着て出かけました。商店を兼ねた自宅に家族を残し、逃げるよう呼びかけなかったことを後悔しています。

(煙山さん)
「(これまで消防団活動から)すぐ自分が、家に帰ってくることが続いていた。また帰ってくるという気持ちが強かったのか。『早く避難しなさい』と言いそびれて、消防に走ったから、それが未だに悔やまれてしょうがない」
被災した自宅跡で見つかった「雛人形の写真」

元の場所に自宅を再建するのは・・・


「これには驚いた」

 震災の年の4月初め、自宅の跡に足を運んだとき、妻の昌子さんが大切にしていた、雛人形の写真を見つけました。20年ほど前、一体一体撮影し、茶箪笥にしまっていたものです。

(煙山さん)
「『そこに行きなさい』と言われた感じ。足下、ちょうどここにあった。『今度、絶対、飾ってやるからな』と思った」

 2年前、写真を段飾りにして公民館に展示すると、昌子さんの知り合いが見に来てくれました。

(煙山さん)
「『こうだったよ』と思い出話をしてくれた。家内も喜んでいると思った」

 煙山さんは元の場所に自宅を再建。来月中旬に引っ越す予定です。
「津波で家がなくなり海が近くなった」と語る煙山佳成さん

「防潮堤を過信せずに逃げる」


(リポート)
「煙山さんは再建した自宅と海との、距離の感覚が変わったと言います」

(煙山さん)
「津波で家が無くなると本当に(海が)近い。前は結構、距離があると思っていた。家は少し高いと思っていたら平らに見える。(海が)近く見える。こんなに近かったかなと思う。(防潮堤があっても油断できませんか)できません。元の場所に建てましたが、安心はしていません。『防潮堤が建ったから良い』ではなく、いざという場合は逃げる覚悟をしています」

「防潮堤を過信せず逃げること」。津波で家族を失った煙山さんが訴える、重い教訓です。
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