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 東日本大震災のあと、岩手県野田村にワイナリーが創設されました。このワイナリー、村を訪れていた震災ボランティアの「ひとこと」がきっかけで創られたもので、今では地域の農業を支え、野田村の復興を全国に発信しています。
 岩手県沿岸北部、野田村玉川地区にある、小高い丘の上におととし誕生した「涼海の丘ワイナリー」です。工場にはワインを楽しむことができる、季節限定のカフェが併設されています。

(タンク案内)
「4つのタンクと向こうの、こっちには赤のタンクなんで、向こうはロゼが入っているので」

 村が出資する第3セクターのこのワイナリーで、責任者となる「所長」を務めるのが、村出身の坂下誠さん47歳です。

(坂下さん)
「海が見えるワイナリーで、ワインをちょっとテイスティングして、おいしいものでも食べれば、野田村の良さというのが、わかっていただけるのかなと思いますし」

 この地域では古くから自生する、山ぶどうの搾り汁を飲む習慣があります。ほど良い酸味が特徴の完熟した山ぶどうの果汁を、上質なワインに仕上げたのが、「涼海の丘ワイナリー」自慢の「紫雫~MarineRouge」です。
 岩手の山ぶどうは栽培面積日本一を誇り、そのおよそ4割を占めるのが野田村です。野田の山ぶどうは太平洋から吹く、冷たく湿った「やませ」にさらされることで、じっくり熟成されて育つと言われています。
 地域の恵みを活用したワインの醸造が始まって、2シーズン目となった去年仕込んだ新酒は「赤」と「ロゼ」、そしておととし産のワインを寝かせた、「樽熟成」の3種類が先月25日にお披露目されました。今シーズンのワインは酸味が丸く、フルーティーな香りが際立った、飲みやすいワインに仕上がったということです。村内の道の駅にある物産施設でも売れ行きは好調だと言います。

(物産施設従業員)
「お土産にしたいとか、プレゼントにしたいと言ってくれるお客さんがけっこういて。おいしいと言っていただいて、飲みやすいという声はたくさん聞きます。そしておいしかったから、また買いにきたよと言ってくれるお客さんもいます」
山ぶどうをはじめ地域資源をとことん活用

震災ボランティアの一言がきっかけで・・・


 村の新たな名物となりつつあるワイン。その誕生のきっかけとなったのが、7年前に地域を襲った東日本大震災でした。

(坂下さん)
「野田村のものがいいという、地元のいいものがあるということに、気づかされたのが大きいと思いますね、震災後は」

 2011年3月の東日本大震災で、野田村では37人が犠牲となったほか、300棟余りの家屋が全壊しました。そして2014年の冬、復興応援のボランティアで村を訪れていた女性が、小田祐士村長に向け言った言葉が、ワインセラー誕生のきっかけになったといいます。

(ボランティアの言葉)
「野田には山ぶどうという、すばらしい資源ある。何とか商品化したほうがいいんじゃないですか?」

(坂下さん)
「山ぶどうを一番、有効に皆さんに知ってもらうにはどうすればいいか? やっぱりワインじゃないのかと」

 ワインセラーをつくるプロジェクトで、責任者に抜擢されたのが、ソムリエの資格を持ち、ワインづくりに一定の知識がある坂下さんでした。坂下さんたちが考えたのは、地域資源をとことん活かしたワインづくりです。こちらはワインを熟成させるための樽です。これをどうするかというと…

(坂下さん)
「ワインを詰めて、洞くつに運ぶという作業があります」

 洞くつとはワインセラーの脇にある、旧玉川鉱山跡のことです。こちらでは樽詰めしたワインの貯蔵に、閉山した鉱山跡を利用しているのです。

(坂下さん)
「ワインを一定の温度で貯蔵するのが大事で、湿気もなきゃいけないんですけど、それが自然にここは備わっている」

 かつては日本有数の、マンガンの採掘量を誇った鉱山。村の歩みをつづった「野田村誌」には、玉川鉱山は昭和30年代前半「経営も良好」、「従業員は200人前後にまで増え」、「盛況期が続く」と記されています。かつて村の経済を支えた鉱山。今はその役目をワイナリーが担います。村で山ぶどうを生産する農家岩山儀助さんは、近くにワイナリーができ輸送コストが削減されたことで、収入も以前と比べると安定したと話します。

(岩山さん)
「今はそこに持っていけばすぐ売れますので、値段的にも単価的にも、大分がんばってもらっていますので」
雇用の場ができ、若者の定着にも期待が高まる

復興から地域振興へ


また雇用の場が生み出されたことで、若者の定住にも期待がかかります。この日は村が地域おこし協力隊として採用した、若者2人がワイナリーを手伝っていました。

(関根桃子さん・東京都町田市出身)
「私けっこう自然が好きなので、すごくいい場所だなと思います」

(山口光司さん・栃木県宇都宮市出身)
「山ぶどうの生産とかも、自分のできる範囲で協力していければと思っています」

 ワイナリーは運営資金の一部に、ウェブ上で出資を募るクラウドファンディングを活用。この時期になると北は北海道から南は沖縄まで、全国の出資者へワインと村の特産品を送る作業に追われます。

(坂下さん)
「やはりお客様からの思いも乗っているワイナリーですので、期待には応えたいなということで、応えられるようにワインは作っています」

 ワイナリーは今後、醸造用のタンクの増設も検討していて、さらなる増産も視野に入れています。そして見据えるのは、震災からの復興とその先にある地域の振興です。
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