IBC岩手放送

 
シリーズでお伝えしている震災7年・被災地は今、4回目のテーマは「避難所」です。陸前高田市で、避難所の運営についての教訓を全国に発信しようという取り組みが行われました。佐藤将幸記者の取材です。
 
東日本大震災で甚大な被害を受け、最大で1万人余りが避難生活を送った陸前高田市。震災から7年を前にした先月中旬、全国から80人余りがある場所に集いました。陸前高田市スポーツドーム。震災の時に避難所となり最大でおよそ200人が避難生活を送りました。

 (リポート)「午後2時46分、ちょうどに訓練用の地震速報が鳴りました。そして地震が発生し津波が襲ったという想定で、我々は疑似避難者となります」

 この日行われたのは「いざトレ」と名付けられた災害対応トレーニングキャンプです。陸前高田市と岩手大学などが主催したもので、災害時の避難生活を再現して過ごすことで避難所運営のノウハウなどを学んでもらおうという狙いがあります。一般市民のほか自治体や介護施設の防災担当者らおよそ80人が参加。四国や九州からの参加者もいました。

 (森裕美さん)「南海トラフ地震で津波はあまり被害はないとは思うのですが、液状化がすごいと思うので、避難者を受け入れるほうで研修を受けに来ました」
 
 参加者の一人、森裕美さん54歳です。徳島県にある介護施設で看護師長を務める森さん。関東から九州にかけての広い範囲で強い揺れが起こると予測されている南海トラフ巨大地震が発生した際、施設が避難所となることを想定し、運営ノウハウを学びに来ました。

 (森さん)「施設では毎月のように防災訓練をやっているので、その訓練の一環として…。これを持って帰ってみんなに伝えたいと思います」

 (菅野修さん)「決断は早いほうがいいと思います。皆さん集まっている8割くらいがオッケーだな、いいというだろうな、あとの2割は反対するかもしれないけどいいだろうなと思ったら先にゴーサインです」

 講師の1人、菅野修さんです。この避難所の運営責任者を務めました。自らが試行錯誤して考案した避難所運営のノウハウを伝えます。

 (説明する菅野さん)「カレンダーの裏をお渡ししますのでお名前と住所を各グループごとにまとめてください」

 まず行ったのは安否情報の発信に欠かせない避難者名簿の作成です。同姓同名の人がいても判別がしやすいよう年齢や住所などを詳しく情報を記入することが重要です。

 (参加者)「もうちょういもうちょい。オッケー!暑い暑い」

 参加者が組み立て始めたのはテントです。プライバシーを守ることが目的で、この日は実際の避難生活で使われたものを協力して組み立てました。1つのテントに5.6人が入ることができ、ここで一夜を明かします。

 (森さん)「普通のテントならあるのでそれを建ててトリアージをすることは考えていましたが、私はテレビでしか見たことがないのですが、広い体育館でプライバシーのない仕切りのないところで寝るよりはテントがあったほうがいい」

 食事の準備が始まりました。ガスや電気は使えないため、一斗缶を加工して作ったコンロで食材を調理します。火起こしも自分たちで行わなくてはなりません。森さんは悪戦苦闘しています。

 (森さん)「なかなか火がつかないんですよ。どれぐらい炭を入れたらいいのかわからないのですごい入れちゃってそれで煙っています」

 この日の夕食は焼き肉です。震災発生当時、避難した人の中に肉の加工品を配達途中だったドライバーがいて食材の提供を受けました。3月11日の夜は提供された肉をみんなで分け合って空腹を満たしたといいます。このエピソードがもとになり、メニューが焼き肉となりました。

 (参加者)「表面は熱い。中は冷たい」「おいしいですね。温かくて」
 
(ラジオの録音)「大槌町では避難所の一つ中央公民館におよそ1000人が避難していて市街地は壊滅状態だということです」

 (リポート)「実際に災害が起こった時と同じように物資が次々とトラックで運ばれてくるのがこのキャンプの特徴です。今は寝袋が届けられています」
 
 午後10時が過ぎ就寝の時刻となりました。寝袋と毛布1枚で一夜を明かします。

 (リポート)「テントの中それほど気温が低いとは感じないんですけれども、地面が非常に冷たいです。地面と接している体の部分が非常に冷えます」

 (参加者)「固くて寝られるかわからないのですが疲れたので早めに寝ようかなと思います」

 あの日、震災発生直後も雪が降るなど厳しい寒さでした。この日も夜の気温は3度を下回り刺すような寒さがテント内に流れ込みました。

 (2日目の朝の森さん)「寒かったです。下からすごい冷気が来て…。起きるのが嫌だったくらい。下に何かを敷く。たとえば新聞であったり段ボールであったり。本当に勉強になりました。きのうの夜は」

 (陸前高田市・中村課長補佐)「できる限り地域という考えをもう少し大きくもちまして、被害がなかった方も避難所運営にかかわるというのが大事なんです」

 2日目のプログラムで参加者に配られたのは陸前高田市がまとめた「避難所運営マニュアル」です。実際に避難所の運営に携わった住民から意見を募りつくられました。作成に携わった防災課の中村吉雄課長補佐です。災害時にすぐ使えるようさまざまな工夫を施しました。

 (中村課長補佐)「あえてファイリングして配布しているが、1冊で閉じてしまうと誰かが読んでいたらほかの人が読めない。ファイリングしていれば必要なところだけ取り出して皆さんで読むことができる。効率性を考えている」

 内容は必要となる物資のリストや暑さ、寒さへの対策など具体的なことが記されています。震災の教訓から生まれたこのマニュアルの内容を全国からの参加者を前に丁寧に説明した中村さん。最後にこう強調しました。

 (中村課長補佐)「大事なのは今日学んでもらったことを持ち帰って使えるものは使う、ここはちょっと違うよねということはアレンジしてもらう。いかに自分の町に落とし込んだ時にどういう風に生かせるのかを考えていただければ」

 自衛隊や地元の婦人会による炊き出しも行われました。おにぎりと豚汁が冷えた体を温めます。

 こうして1泊2日のトレーニングキャンプは終わりの時を迎えました。講師を務めた菅野修さんは今回伝えたノウハウが全国でどう生かされていくか注目したいと話します。

 (菅野さん)「自分たちのところに起きた場合の想定をしなくちゃいけないということが東日本大震災の後に皆さんが気づかれてきたというのは大きいこと。避難所の規模避難所に避難されている方々の地域性を考えた独自のローカルマニュアルも必要なんじゃないかという感じはしますね」

 (森さん)「今度もし自分が被災したときにこうしたほうがいいということがちょっとだけわかったかな。なんでもパッパパッパ決められるようなリーダーになれたらいいなと。頭で考えるのはだめです。というのがわかりました」

 厳しい避難生活を体験してもらうという被災地ならではの取り組みは、災害時に命をつなぐための教訓を全国に伝える貴重な機会となりました。
×