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東日本大震災の発生から間もなく7年。シリーズ2回目は、教訓を後世につなごうという大槌町での取り組みを紹介します。私たちはあの震災から何を遺して、何を学ぶべきなのでしょうか?
 
去年7月、大槌町震災検証室の小山雄士室長は、震災発生時の大槌町災害対策本部の活動について、1年間にわたる検証の結果を平野公三町長に報告しました。当時の町長をはじめ30人以上の職員が命を落とす結果となった旧役場庁舎での一連の行動。その背景について小山室長はこう語ります。

 (小山室長)「危機管理というものをよく理解できてなかった。津波で自分たちが被災するという感覚があまりなかった」

 住民を災害から守るという使命感の一方で、自分たちに危険が及ぶ危機感が希薄だったと検証報告書は指摘しています。危機管理の甘さが招いた悲劇。一方で小山室長は職員100人あまりの小さな組織が危機管理に特化した取り組みを充実させる難しさも指摘します。

 (小山室長)「日々の業務に忙殺されるというか、防災というのは今いま目の前で何かをしなければというモノでもはないんで、後回しになってしまう傾向にある」

 業務の終了後、小山室長の部屋に大槌町の職員が集まってきました。小山室長が週1回のペースで開いている危機管理の勉強会です。

 (勉強会での小山室長)「今日は、実際に危機管理班がどんなところからどんな情報が入ってくるかというイメージ付け。入ってきたことをどう対応に活かすか?」

 この日は情報の活かし方について実際に災害が起きた場合を想定してイメージトレーニングをしました。

 (小山室長)「町内全域でそういう風な倒壊等が発生している模様。どんな情報が入ってくるだろう。ナベちゃん」職員「例えば火災なんかは入ってくるだろうし、あと土砂崩れで生き埋めになっているとか」

 小山室長は元県職員。東日本大震災の際には県の総合防災室長として陣頭指揮を執りました。一連の役割を終え、今月いっぱいで大槌町を去ります。それまでの間に検証作業で分かったことや自身の経験を、できる限り遺していきたいと考えています。

 (職員)「例えば小鎚だったらば、本当に小鎚だけなのか、町の方はどうなっているのとか。役場は大丈夫かとか」

 (小山室長)「さっき言った照会情報な」

 (小山室長)「役場の防災力というか、行動する力とか対応する力を高めてもらえればと思っています」
回顧録「生きた証」
大槌町は被災した旧役場庁舎の解体・保存を巡って意見が分かれている状況ですが、震災遺構の議論とは別に、未来の災害と向き合う取り組みが続けられています。

 大槌町の震災犠牲者一人一人の人となりや震災時の状況を記録した回顧録「生きた証」。遺族からの聞き取りにより、犠牲者の生前の歩みや遺族から寄せられた思いが、1000ページ以上にわたって綴られています。プロジェクトは2014年に始まり、去年3月、犠牲者の半分にあたる545人分が掲載された平成28年度版が発刊されました。そして先月22日。

 (高橋英悟代表)「生きている間、精一杯この大槌町で生きてきた。頂戴した命を精一杯生きてきたという記録がしっかりと残っています」

 今年度新たに聞き取りが行われた76人分の記録が、市民有志による生きた証プロジェクト推進協議会から大槌町に提出されました。3月11日の追悼式で霊前にささげたのち平成29年度版として発刊します。聞き取りを行った委員の一人に、自らも津波で家族を失った男性がいました。

 (小林一成さん)「プロジェクトに参加しまして、自分とすれば娘を亡くしたものですから…」

 小林一成さん。津波で娘の秀子さんを亡くしました。

 (小林さん)「娘の死を無にしたくないなと思って参加しました。例えば自分の方には何もそういうアレがなければ、聞かれた人たちも自分は何もそういうのがないからという意味合いもあったでしょうけど。そういう意味合いでは立場は分かっているから、そういう面で色々と協力してもらいました」

 しかし、聞き取りのため遺族に向けた問いかけはそのまま自分にも返ってきます。

 (小林さん)「携われば携わるだけ、娘のこうだったああだったという記憶が戻ってくるというか。辛い面も多々ありましたね」

 今回、新たに聞き取りに応じた76人の遺族のうち、当初の聞き取り辞退・保留から一転したケースが18件ありました。生きた証の編集にあたった大槌町震災伝承室の北田竹美室長は、遺族の心の変化を感じとっています。

 (北田室長)「あれから7年が経ってその方の言うには『自分の気持ちだけで決めていいのかという思いになってきた』。あの世に行った家族はひょっとしたら書いてほしいと言っているかもしれない」

 こうして、新たに記録として残された76人分の生きた証。そこには、生前の人となりや遺族からの思いのほかに、震災時の行動も記録されています。

 (朗読)「生前、自分の足も不自由になってきたので、母のところには寄れないからねと伝えていました。しかし実際は、実家の母の様子を見に行きました」

 (北田室長)「このお一人お一人が発災時にどういう行動をしたのか、つぶさに書いてある。これから未来の人たちがこれをお読みになることによって、個人の行動というものに対して津波というモノに対して、これだけ恐ろしいものだ。じゃあ、どうすれば良いのかということを考えるきっかけになると思っています」

 一人一人の遺族とじっくり向き合うことで遺すことができた震災犠牲者の生きた証。そこには未来を生きる人たちへのかけがえのない教訓が、遺されています。
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