IBC岩手放送

 
岩手県釜石市では津波で浸水した中心市街地を、再生するプロジェクトが進んでいます。一方で、その効果を不安視する声も聞かれています。震災からまもなく7年。岐路に立つ街のにぎわいづくりを取材しました。

(市民ホール開館)
「どうぞ!」

 12月8日、釜石市の中心部に新たな市民ホールが完成しました。芸術・文化の拠点であると同時に、津波で被災した中心市街地に、人を呼びこむ役割も担います。釜石市は駅から魚市場までの、およそ2.2キロを3つのエリアに分け、それぞれににぎわいと、人の交流が生むための計画を進めています。

(釜石市商業観光課・平松福壽課長)
「前と同じような街に戻してもだめだというのがあったから、来てもらえる街になりましょう、ハード面でもおもてなしの面でも、というのがスタートとしてあった」

 市民ホールがある一帯は「フロントプロジェクト1」と名づけられ、「商業とにぎわいの拠点」に位置づけられています。一帯はかつて、商店が立ち並ぶアーケード街でした。しかし…

(2011年3月12日リポート)
「これが釜石のメインストリートです」

 2011年3月の東日本大震災。津波で泥とガレキに埋まった目抜き通りの商店街では、必死の思いで再スタートを切る店の姿がありました。

(田丸スポーツ・田丸晃右社長)
「せっかく(津波から)生きたもんだから、死ぬ思いなら何でもできるし、自分にやれることは商売」

 しかし元の場所から離れたり、再建をあきらめたりする事業者も多く、市街地に4つあった商店会のうち、3つが震災後に解散しました。
大型店への「一極集中」に商店主たちの危機感が募る

核となる大型商業施設は誘致したが・・・


(2014年3月イオンオープン)
「おめでとうございます!」

 中心市街地の再生のために、釜石市が最初にとった方策は、近隣に大型ショッピングセンターを誘致することでした。にぎわいの核となる施設を造り、そこに訪れた人々を、街中に呼び込もうという目論見です。津波で浸水した市街地のかさ上げは最小限にとどめ、復興のスピードを優先。災害公営住宅や市民ホール、飲食店街など人々が集まる施設を集中して整備したことで、街の姿は大きく変貌を遂げました。

(釜石市商業観光課・平松福壽課長)
「震災前、日曜日はシャッター通りだった釜石。今とは全然違う。今の方が表面的にはにぎわってますよね」

 市街地の商店街で、被災から一早く再起を図ったスポーツ店です。大型ショッピングセンターに、大手のスポーツ用品店がオープンしたことから、今は学校用品などを中心とした商いをしています。

((株)田丸・和田雅己店長)
「これから忙しくなります。2月から2、3、4と忙しい」

 大型店から人を街中に呼び込むという、市の計画は「期待薄」と感じています。

((株)田丸・和田雅己店長)
「ショッピングセンターから人を流すというのは、まず無理だろうなと。逆にショッピングセンターに行くには、商店街を通らなきゃ行けないような造りをしている所はある程度、人が流れてうまくいったというのは聞いています」

 釜石市が昨年度、市民1000人を対象に行った調査では、車で行きやすく1か所で買い物が済む、ショッピングセンターだけに客がとどまっている傾向が浮き彫りとなりました。危機感を募らせた商店主たちは団結して、行政とともに魅力ある街並みづくりを進めようと去年11月、協議会を立ち上げました。しかし予算をどう確保するのか、目途は立っていません。

(釜石市東部地区事業者協議会・新里耕司会長)
「昔はアーケードがありましたが今は取り払われて、ではここの一帯が周りから、外から来た人でもここが商店街かな、と思えるような街並みになってるかというと、まだまだじゃないかと」
魚河岸地区の「にぎわい施設計画」には市民から疑問の声も

「復興のゴール」はどこか?


 そして市は今年度、3つ目のにぎわいづくりプロジェクトとなる、魚市場周辺での事業に着手しました。魚市場の隣りに5億円をかけて、展望台やイベントスペースを備え、イタリアンレストランやスポーツバーなどが入居する建物を、来年3月の完成を目指して整備する計画です。
 しかし事業はスタートしたものの、市民からは「市の計画通りに、にぎわいが生まれるか疑問だ」と、施設のあり方を不安視する声があがっています。

(委員)
「市民の声も大丈夫なのかいと、引き合うのかい、俺たちの望んでいるものなのかという声がある」「この施設は何のためにあるのかな、というのが一番の疑問」

(釜石観光協会・澤田政男会長)
「海をテーマにするならば、この施設ではちょっと物足りない」

 しかし市は計画に自信を示しています。

(釜石市商業観光課・平松福壽課長)
「外からの人をどうやって釜石の維持、発展に生かしていくかということで、方法論の意見の相違はあるかもしれないが、大きなベクトルはみんな同じ方向に向かっていますから大丈夫です。必ず皆さんに満足していただけるものを造れますから」

(リポート)
「新しい建物を造れば、復興後の街ににぎわいが戻るかといえば、決してそうでないことは明らかです。釜石では来年のラグビーワールドカップを、復興のゴールに見据えていますが、それ以降のことは手探りの状況です。むしろそこからの街、づくりこそが復興のスタートではないか。取材を通してそう感じました」
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