IBC岩手放送

 
東日本大震災による津波で多くの犠牲者を出した岩手県陸前高田市では、防災のまちづくりに向けた取り組みが進んでいます。11月には大規模な避難訓練が行われましたが、犠牲者を二度と出さないために今、行政と住民に求められることは何か、取材しました。

(訓練サイレン)
「大津波警報、大津波警報、東日本大震災クラスの津波が来ます。ただちに高台に避難してください」

 11月、陸前高田市で津波を想定した避難訓練が行われました。訓練は宮城県沖を震源とする震度6弱の地震が発生し、大津波警報が発表されたとの想定で行われました。

(女性店員)
「避難訓練です。お客さまの中でご参加いただける方は北側にお願いします」

 中心市街地再生のため、かさ上げ地に今年開業した商業施設「アバッセたかた」では店員が来店していた人たちを誘導しました。

(誘導する店員)
「避難はこちらです」

 かさ上げ地の商店や図書館を訪れていた人たちは150メートルほど離れた高台の本丸公園に避難しました。

(訓練の参加者)
「流れがわかった。どう動いていいかわからなくなるよりも流れ覚えておいた方があとあと楽になると思うので。しんどいですけどやらなきゃいけないことだと思ってる」
「やらなきゃいけないんでしょうね。釜石なんかでは子どもが率先して逃げたって聞いてますから。小さな子どもが来てますけど、彼らの気持ちにちゃんとしみるようなことをやっていれば、これから先、こんなことがあってもちゃんと逃げるんじゃないですか」

(アバッセたかた・伊東孝理事長)
「お客さんも多く参加していただきましたし、また従業員の方も避難誘導にあたって大きい声を出してお客さまを避難させていたというところでは良かったのかなと思ってます」

 営業時間中に来店客の協力を得て行った初めての避難訓練は、おおむね想定通りに進行しました。
応援職員から陸前高田市の正職員になった中村吉雄さん

「阪神淡路」を経験した職員が取り組む「防災」


「この庁舎内のライフライン等全部オッケーやな。停電とかしてないな」

 同じころ、消防防災センターの一角にある市の防災局では、防災課の職員たちが避難所の開設状況や被害状況などを実際の災害発生時と同じようにチェックしていました。
 真剣な表情で職員たちをまとめているのは大学で防災や減災を研究、指導してきた中村吉雄課長補佐です。兵庫県出身で阪神淡路大震災の経験者でもある中村さんは被災地の役に立ちたいと、県の応援職員として陸前高田に赴任。おととし陸前高田市の正職員になり、まちの防災に取り組んでいます。
 東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市。津波による犠牲者は死者行方不明者合わせて1759人にのぼり、市の職員111人も犠牲になりました。

(堺伸也・市防災局長)
「いずれ震災前は実際に大きな津波を経験してませんでしたので、浸水想定とかあった中で避難訓練とかやってきたんですが、実際に経験していない分もうひとつ浸透・・・命を守ることがなかなか重要に考えられなかったというところがあると思う」

 この反省を踏まえて市は、市民向けの避難マニュアルと職員用の災害時初動対応マニュアルを作りました。職員用のマニュアルには津波到達予想時刻の10分前には退避することが明記されています。

(市防災課・中村吉雄課長補佐)
「やはり避難が何より重要であると。大きな自然災害に関しては津波はもちろんのことですが、安全な場所に素早く逃げる。これしか逆に言うと命を守る方法はないんだと」
「奇跡の一本松」近くにも防災無線が整備された

住民と行政が一体となった「防災のまちづくり」


「こちらは防災陸前高田広報です。テスト放送中です」

 今年3月、奇跡の一本松近くに整備された防災無線です。

(中村課長補佐)
「津波警報等の情報、あるいは市から発表されました避難指示などを素早く一本松付近にいらっしゃる方にお伝えして素早い避難行動を開始していただく」

 この防災無線は、奇跡の一本松を訪れる観光客や周辺で復興事業に携わる作業員たちの命を守るため、新たに整備されました。防災に関して行政の役割は「ハード整備」だと中村さんは考えています。

(中村課長補佐)
「津波では防潮堤を整備したり、水門整備をしたり、避難路を確保したり、避難場所が分かるような避難誘導看板を設置したりということは行政が整備をして、万が一に備えて住民が的確に安全な場所に避難できるように普段から準備をしていくことが大きな仕事だと思います」

 ハード面が整備されたとしても実際に避難をするのは住民1人ひとりです。

(中村課長補佐)
「(市が)避難する場所を準備すると同時に、住民は避難をする。しないといけないという気持ちを持っていただくことが大事になります。最終目標としては地震津波だけでなく、自然災害でこのまちの中からもう命を落とす方が出ないということが防災の目標だと思っています」

 防災の枠組みを作り、いち早く避難する。災害による犠牲者を二度と出さないための行政と住民が一体となった取り組みに終わりはありません。
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