IBC岩手放送

 
三陸の水産業を支え、秋の食卓を彩るはずのサンマが、記録的な不漁に陥っています。本州一のサンマ水揚げ基地である大船渡市では、地域経済への影響も深刻です。

「おいしいですー。最高です(笑)」

 10月21日、不漁のため延期されていた大船渡市のさんままつりが、ひと月遅れで行われ、多くの人が秋の味覚を堪能しました。人々の笑顔に関係者も胸をなでおろしていました。

(佐々木英一実行委員長)
「お天気もいいし、今ちょうどサンマ獲れてきて、一番いいんじゃないかな」
 

サンマ不漁が地域経済に与える深刻な影響


 大船渡の今年のサンマは、不漁と言われた去年の半分となる、わずか15トンの水揚げでスタートしました。2013年の10トンに次ぐ、震災後2番目に少ない水揚げ量です。

(清枝光臣漁労長)
「最悪です。魚がいないね。意気込みはあるが自然が相手だから、うまくいくかいかないかはわからない」

 例年なら毎日のように水揚げがある9月も、魚市場に活気はありませんでした。

(買受人)
「これじゃ困りますねえ。大変ですわ、うん」

 買受人を泣かせるのはサンマの大きさ。この日水揚げされた12トンのサンマは、ほとんどが120グラム以下で、鮮魚として出荷するには小さすぎました。大船渡市魚市場にとってサンマは、全体の水揚げ量の38.4%を占める主力の魚です。金額では全体のほぼ2分の1の49.9%。まさに大船渡の水産の屋台骨です。今年は初水揚げから23日までの水揚げ量が4643トン。去年の同じ時期は7953トンで、4割以上の減少です。不漁によるサンマの高値を理由に、釜石市に本社を置く缶詰メーカーは、宮古市の工場の来月末での休止を決めました。サンマの不漁は雇用を含めた、地域経済に暗い影を落としています。

(大船渡港さんま直送便・佐々木英一理事長)
「お客さんに申し訳ないんだけど、もうこういうサンマしかないから我慢してもらう」

 全国にファンを持つ「大船渡港さんま直送便」。今年は9000個の予約を受けましたが、小さいサンマしか届けられないと関係者は嘆きます。

(佐々木理事長)
「いやいや、去年よりも悪い。2年不漁で今年3年目でしょ。今年はまだひどい。だから今後はどうなるのか」

 サンマが青森沖から三陸沖に南下し今月に入ってからは、大船渡市魚市場にほぼ毎日、サンマ船が入るようになりました。140グラム以上の中型が多かったこの日は、入札も真剣勝負です。
 
(及川冷蔵・及川廣章社長)
「きょうはどうしますかね。まあ買えれば買いたいんですけど。結局大きくても小さくても、値段なんですよねえ」

 鮮魚のほか、サンマの天日干しなども手掛ける及川廣章さんは、1キロ371円で2トンのサンマを仕入れました。生で関東などの卸売市場に出荷するほか、サイズが小さいものは加工用に使います。

(及川社長)
「ここも全部サンマが並んで、あれサンマですけど、冷凍したサンマですけど、あれしかない。本当はこの蔵いっぱい、あれが並ぶはずなんですね、いつもは。毎年そうだ」

 加工品の原料を保管する冷凍庫に、今年仕入れたサンマはありません。

(及川社長)
「やっぱり200円前後にならないと加工として、原料としてはなかなか厳しい。今買って今売る分にはいいんですけど、これをストックして1年中、加工原料としてストックするということになると、なかなか合わないですね。価格的に合わない。できるだけコストをかけないようにして、製品単価を上げないように、努力はしているんですけど、原料がいかんせん高いの、でなかなか苦しいですね。今年こそ今年こそと思って毎年来てたので、このまま来年もとなるとちょっと厳しいというか、もう限界を越えていくかなという気がします」

 サンマ漁を行う市内の会社も現状を憂いています。

(鎌田水産・鎌田仁社長)
「船としても正直、去年より獲れてませんからね。だから価格は確かに去年よりいいのかもしれませんけども、去年より本当に水揚げが半分ですから、船としてもちょっと大変というかね」

サンマの資源量は危機的状況
 サンマ漁は今後、どうなっていくのでしょうか。県水産技術センターなどの調査では今年、サンマが回遊する水温15度以下の海水は、去年よりも三陸沿岸に近い場所に来ると予測されていて、漁の好転が期待されています。

(横澤祐司部長)
「岩手県沖合での漁獲は、例年10月になってから始まります。今年もそのような形で漁獲が始まりまして10月の中旬、下旬と漁獲は少ないかもしれませんが、だんだんと上向いてくるだろう」

 一方でサンマの資源量は、危機的な状況にあるという研究者もいます。

(岩手大学・後藤友明准教授)
「向こう数年間は漁が好転するとは、とてもじゃないけど思えない状況にあります」

 国立研究開発法人・東北区水産研究所の「サンマ長期魚海況予報」の、漁が始まる前の6月から7月にかけて、三陸沖でサンマの分布量を調べた結果によりますと、2000年代は200万トン前後で推移してきましたが、4年連続で減少し今年は去年のおよそ半分の、86万トンと推定されています。

(後藤准教授)
「漁業者が獲れない、もしくは資源を管理しなさいという問題にとどめるのではなく、それを仕入れて販売する側の人間も、真剣に資源の状況にきちんと受け止めて、戦略を立てていくことをやっていかなければいけない。あくまでも資源に裏打ちされた計画でなければいけない」

 東日本大震災による被害から復旧した矢先に、サンマの資源の減少と、高値という荒波が押し寄せた岩手の水産業。関わる人々が一つになっての、未来を見すえた計画づくりが迫られています。
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