IBC岩手放送

 
8月上旬、岩手県北上市で行われた「北上・みちのく芸能まつり」。出演団体の中に、震災から復活した大槌町の虎舞グループの姿がありました。支援への感謝を込めて披露された勇壮な虎舞。19歳の舞い手の思いを見つめました。

 日本有数の民俗芸能の祭典「北上・みちのく芸能まつり」。今年も8月4日から3日間行われ、県内外の120を越える団体が、熱い演舞を繰り広げました。
 今回、初めて参加した「大槌城山虎舞」は、21年前の1996年、虎舞好きの若者が集まって結成したグループです。
 結成15周年を目前に東日本大震災の津波で、道具のほとんどを流されました。しかし残った道具をかき集めて、避難所から活動を再開。2012年の元日には神社で舞い初めをし、リヤカーを山車代わりに、仮設住宅を回って安全祈願の門打ちを行いました。その後、全国からの支援で衣装や道具をそろえ、山車も復活させました。
 今回は大槌町産のヒノキでこしらえた、重さ1トンの新しい山車を引き連れての参加です。
虎舞と家族のため、大槌町に残る決心をした小林海祟さん

虎舞は「日常生活の一部」


 舞い手の一人、小林海崇さん19歳。震災時は中学2年生でした。虎舞には父の影響もあり、物心ついた頃から参加しています。

(小林海崇さん)
「山車の迫力と、自分たちのかけ声と踊りをみてほしい」

 一方、ビデオカメラを持ってメンバーにあいさつしているのは、芸能まつりの実行委員で、城山虎舞出演の仲介役となった阿部武司さんです。阿部さんは北上の映像制作会社「東北文化財映像研究所」の所長で、震災直後から小林さんたちの活動を記録し、交流を続けてきました。

(阿部武司さん)
「彼ら(城山虎舞)は、俺たちこうやって復活したんだよっていう姿を、広く見てもらいたかったんじゃないかなって」

 虎舞は2人1組になって虎に扮し、戯れたり暴れ狂ったりする様を表現します。最大の見せ場は「笹ばみ」といって、虎が笹で牙を磨き爪を研ぐ場面。若手のリーダーである小林さんの実力は、周囲の認めるところです。

(城山虎舞会長・坂本信幸さん)
「(海崇さんは)根がしっかりしている。何も言わなくても人のやっていることを見て、自分のものにする」

 小林さんは大槌町で両親と愛犬とともに暮らしています。震災の津波でもとの自宅を流されましたが、今年ようやく再建し6月に入居しました。高校を卒業した一昨年、地元に残る決心をしたのは家族のため、虎舞のためです。

(海崇さん)
「(虎舞は)日常生活の一部。(地元離れたら)お祭りに帰って来られないのではという恐怖があった。(震災前、城山虎舞は)目を向けてもらえなかった。こういうところに郷土芸能があるよと、(阿部さんに)広めてもらったので本当にうれしい」
感謝の思いを込め 若々しく勇壮に舞う虎

支援への感謝 そして「ふるさと」で生きていく決意


 みちのく芸能まつりでの大槌城山虎舞。終盤、虎は会場を所狭しと暴れ回ります。舞い終えると大きな拍手が巻き起こりました。

(観客)
「かっこよかった」「かなり迫力があって間近で見られてよかった」

(阿部さん)
「あれほど大きな動きをする虎舞は見たことがない。彼らの思いが遂げられたのかな」

(海崇さん)
「終わったあとの拍手、見ている人たちの手拍子が、踊りの力に変換されていい踊りができる。これからも精進していく」

 支援への感謝を込めた虎舞披露。明るく若々しい、その舞は「ふるさとで生きていく」小林さんの力強い決意表明です。
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