IBC岩手放送

 
岩手県大槌町中心部の夏祭り「よ市」が、先日7年ぶりに復活しました。この祭りの盛り上げに一役買っているのが地元のアマチュアバンドです。震災から「よ市」復活まで、歌に思いを込めたアマチュアバンドの日々を追いました。

大槌町で活動するロックバンド「ムーミンズ」です。メンバーは6人。震災以来7年ぶりに復活するまちの夏祭り「よ市」でのステージを翌日に控え、仕上げの練習に臨んでいました。バンドのリーダーは喫茶店を営む赤崎潤さん、53歳です。

(赤崎潤さん)
「震災前の感じで笑いあって、お酒飲んで楽しくできればなとそれが願い思いです」

 楽しく飲んで笑いあった「よ市」。30年以上前に、大槌町中心部の商店会が始めた夏祭りです。呼び物の一つが、ムーミンズなど地元のバンドの出演で盛り上がる、「ビアガーデン」でした。トリを務めたムーミンズ。このとき、あの悲劇が襲ってくるとは誰一人、想像していませんでした。
取り壊される建物の屋上で「街の姿」を目に焼き付けた

すべてが消えた街に響いた演奏


(2011年4月 震災後のリポート)
「大槌商工会ですね。この辺が大槌商工会だと思いますこの辺でこの駐車場で夏にコンサートとかやったんですけど。あー・・何もない」

 津波とその後の火災に見舞われ、無残な姿に変わり果てたまち―。大槌町中心市街地の死者・行方不明者は600人以上―。町全体の犠牲者の半数を占めました。

 津波で家族を亡くしたメンバーもいましたが、全国から楽器の支援も寄せられ、ムーミンズは活動を再開しました。
 赤崎さんの喫茶店と自宅は津波で全壊。2013年12月。この日は建物が取り壊されるのを前に、屋上で記念の演奏をしました。目の前には、すべてが消えた大槌のまちが広がっていました。

(2013年12月 赤崎潤さん)
「これでこの景色もしばらく見納めなんでいい記念になりました。こんなことが復興したら出来たらいいなと思います。ありがとうございました」
復活した「よ市」 多くの町民が集まり、演奏で盛り上がった

「まぼろしの街に、みんながいる」


 そして震災から5年余り。去年の夏、中心市街地の復興はやっと目に見えるところまでたどり着きました。
 店の再建に目途がたった商店会のメンバーから「よ市」復活の話が持ち上がり、赤崎さんを中心に準備が始まりました。しかし、心配なことがありました。中心市街地に店や家を再建する人が町の予測を大きく下回り、果たして震災前のように人が集まるのか、予想がつきませんでした。

(赤崎潤さん)「私たちができる範囲でまとまってできることをまずやってそれで少しでもまちが盛り上がっていけばいいなとそれでやっていくしかないかなという思い」

 そして迎えた今年の夏―。1年かけて準備してきた「よ市」の復活です。雨にもかかわらず、大勢の人々が会場に集まりました。
 赤崎さんが待ち望んでいたビアガーデンの復活。仲間たちが駆けつけ、復活の喜びを歌に込めました。 
 そしてムーミンズ。震災後に作ったオリジナル曲「まぼろしの街にあの娘が」―。

(歌)
「まぼろしの街にみんながいる まぼろしの街でみんなが笑ってる」

(赤崎潤さん)
「本当にきょうやるか迷ったが、始まって町民のみんなが来てくれたことで一瞬うるっときて、バンド仲間が盛り上げてくれてうるっときて、本当にやってよかったと思いました。これを機に毎年毎年このイベントやって、少しでも大槌のまちを盛り上げるようにやっていきたい」

 まぼろしになってしまった震災前のまちの姿をそっと胸に抱いて―。ムーミンズは新しいまちの新しい「よ市」で、これからも歌い続けていきます。
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