IBC岩手放送

 
岩手県内で仮設住宅、またはみなし仮設住宅で暮らす人は6月30日現在、1万671人です。県内の仮設住宅の現状を伝えるシリーズ「仮設住宅は今」。今回は、津波で自宅をはじめとする財産が流されたものの「人脈は流されなかった」と語る大船渡の元公民館長の男性です。

仮設住宅の集会室に響く賑やかな笑い声。夫婦で暮らす吉田忠雄さん(76)です。88世帯住んでいた住民は、現在30世帯にまで減りました。

(吉田さん)
「最後まで残っているのは高台移転の人達。だから増々、絆が強まる」

 被災後、最大420人が4か月、身を寄せた避難所です。赤崎地区公民館長だった吉田さんは、毎日の朝礼の際、ジョークを交え、地域住民の不安を取り除くことを心がけました。

(吉田さん)
「ここでは川の字に皆、ごろ寝。こんなことでもないと、隣の奥さんと枕を並べて話すことはないんだから、ゆっくり世間話をしなさい、と」

(リポート)
「公民館の一角には、神戸大学や上武大学の学生達の募金を元に建立した像があります」

(吉田さん)
「ちょうど3・11の1年後の慰霊祭に併せて建立した報恩謝徳像。私が命名。これは全国の皆さんから受けた恩を忘れないように」
吉田忠雄さん(76) 高台に新築する自宅には交流スペースを作る予定

家でも土地でもない 「人の絆」が最後の財産


大船渡市赤崎町で生まれ育ち、太平洋セメントに勤めた吉田さん。自宅をはじめとする財産を津波で失いましたが、40代の4人の子ども達は無事で、県内・県外で独立しています。

(吉田さん)
「(築)10年も経たない内に流されてしまった。けれども惜しいと思わない。やっぱり残ったのは人脈です。人を知っていることの大切さをしみじみ感じた」

 自宅を再建する高台の造成地です。吉田さんは東京や大阪など全国を回り震災の体験を伝えています。講演で一番、訴えたいのは、「人脈」の大切さです。

(吉田さん)
「ガレキを処理する作業衣が欲しかった。職場だった(太平洋)セメントの仲間が、全国の工場から作業衣を集めて持ってきてくれた。200人分、それが最初、人脈だと思った。人間の一番大事なのは、家でも土地でもない。人脈ですと。人を知っている絆、これが最後の人間の財産ですよ、と」

 来年の春入居する自宅には、敷地の一角に「離れ」を造り、住民の交流スペースにするという吉田さん。これからも人との繋がりを大切に、故郷で暮らします。
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