IBC岩手放送

 
岩手県陸前高田市の新たな市役所は、市議会の議決を経て津波浸水域にある高田小学校の跡地に再建されることになりました。一旦、条例改正案が否決されるという展開をたどった市役所再建問題、市民の声は十分に反映されたのでしょうか。

(陸前高田市議会6月定例会)
「賛成の議員の起立を求めます」

 先月9日、陸前高田市議会は市役所新庁舎を、高田小学校の跡地に新築するための条例改正案を可決しました。3分の2以上の賛成が必要な「特別多数議決案件」でしたが、市は議長を含む議員17人中、14人の賛成を得ることができました。高田小が津波で浸水したことや「はじめに場所ありき」の提案への反発から、この条例改正案は3月議会では否決されました。
 国の補助金を受けられるタイムリミットが迫っていたため、戸羽太市長は安堵の表情を見せました。

(戸羽太市長)
「万々歳で賛成をしていただいたわけではないと思っておりますので、いずれ議会の皆様とももっともっと話をしながら今、皆様が懸念されているところを、少しでも払拭できるような、ハードソフト合わせて議論していきたいと思っています」

 しかし議会を傍聴した市民の中には、釈然としない表情を浮かべる人もいました。

(議会を傍聴した人)
「3月以降、市当局も議会もなんとなく、住民の方を向いてないという気がしまして」
「浸水域への庁舎建設っていうのは、どんなことがあっても賛成はできないし納得もできない」
「町民も誇りに」と町長が胸を張る住田町の木造役場庁舎

隣の住田町では震災後、2014年に役場庁舎を新築


陸前高田市の隣り、人口およそ5700人の住田町では3年前、木造の役場庁舎が新築されました。事業費およそ12億5000万円のほとんどは、庁舎建設基金でまかなわれ、町内産の木材がふんだんに使われています。

(多田欣一町長)
「先輩たちが一生懸命、基金を積みながら町民の人たちも、待望久しかったもので、本当にきょうは感無量。町民が思っている、そして希望しているような施設に出来上がったと考えています」

 1958年に完成した以前の庁舎は、東日本大震災でひびが入るなど、倒壊する恐れが生じました。

(多田町長)
「民家住宅が助かっても役場が、いの一番につぶれそうなそんな感じの役場でしたので、町民はそれを知ってるわけですね。だから沿岸地域の役場が被災したのを見て、うちは大丈夫かと、町長何してると、金はあるんだろうと、早く造れっていうのが町民の人たちから寄せられた声でしたね」

2011年11月から役場内での検討や、住民との対話を重ね、官民一体となって新庁舎の建設を進めました。

(多田町長)
「木造公共施設のモデルになるようなものを、造りたいと思って造ったもんですから、よけい町民の人たちから、この施設を誇りに思ってくれていると思います」

 津波で庁舎が被災した宮古市も現在、別の場所で新庁舎を建設中です。宮古市は2014年から、市民への説明会などを行ってきました。
新庁舎が建設される高田小学校跡地

市役所新庁舎は「市民一体で復興に進むためのシンボル」


陸前高田市広田町の村上毅彦さんは、積極的に市議会を傍聴してきました。条例改正案が一旦、否決された3月議会までは市と議会は、市民に一定の説明を行ってきたと振り返ります。しかし…

(村上毅彦さん)
「否決になったあと何回か議会が行われてはいるんですけども、市や議会から特段のインフォメーションがない。それがなくて個人の印象なんですけども、3月に反対した7名の方しか、見てなかったような印象はあります」

 当初、1階が柱のみのピロティ構造で建設を目指していた高田小学校跡地への庁舎の新築でしたが、6月議会に提案されたのは、土地を海抜17メートルにかさ上げした上で7階建ての庁舎を建設するというものでした。この変更について、市から市民への直接の説明はありませんでした。

(村上毅彦さん)
「やっぱり市任せ、議会任せだけでなくて、住民も入って議論していかないといけないんじゃないかなとは思います」

 7階建て庁舎の具体的な内容はこれからで、市と市議会には今後、市民の声を反映させていくことが求められます。大きな犠牲の上に再建される市役所新庁舎は、人口2万人を割り込んだ陸前高田市が、一体となって復興に進んでいくためのシンボルとなる建物です。
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