IBC岩手放送

 
岩手県宮古市で日曜日限定で営業する、魚介類の店が今、評判を呼んでいます。店の主は市内の水産加工業者など7社。手を携えて、お客さんと直接向き合いながら復興を目指す「海の産直」の取り組みです。

 ゴールデンウィーク最初の日曜日となった先月30日。津波被害からの復旧が進む、宮古運動公園そばの駐車場に車が続々と入っていきます。人々が目指すのは海の産直「きとがんせ」。宮古の方言で「来てください」「いらっしゃい」という意味です。

(店内の様子)
「これいくら?」「300円になります。焼いて食べておいしいのは鮭のハラス。脂があっておいしいですよ」

 オープンは去年の7月。店を運営するのは、市内の水産加工業者と包装資材業者、合わせて7社。地元で獲れた魚介類を中心に、それぞれが手がける海産物を販売しています。加工や卸売の業者がお客さんに直接販売。しかも連携して店を営業するのは、宮古ではほとんど例のないことです。

(買い物客)
「一番いいのは安いから」「色々あるからね」「お得だと思います。(何買いましたか)サケとかコロッケとか、美味しいです」
様々な工夫で水産業の復興を目指す「イカ王子」こと鈴木良太さん

「イカ王子」が引っ張る「海の産直」


(鈴木良太さん)
「いらっしゃいませ。宮古のトロールで水揚げされた吉次です」

 この海の産直「きとがんせ」の中心メンバーが鈴木良太さん35歳です。鈴木さんは1985年創業の「共和水産」の2代目です。主にイカを扱っています。自ら「イカ王子」を名乗り、先頭に立って商品開発や、海外への販路拡大を進める、宮古水産界のホープです。震災後、水産業を取り巻く環境が厳しさを増す中、鈴木さんたちが温めていた構想が、この「海の産直」なのです。

(鈴木良太さん)
「魚価が高騰して、それを商品の売価につなげることができなかったので、それを嘆いていてもしょうがないので、私たち加工業の人たちが何か工夫をして、それを出せればなあと」

 大型連休を控えた先月25日。鈴木さんの工場では商品の袋詰めが行われていました。

(鈴木良太さん)
「宮古のスルメイカが入ったさつま揚げです。直接店舗に向けて販売するので、通常の価格より安くお買い求めできます」

 流通の効率化のほか、卸売には適さない不ぞろいの物をあえて集め、低価格で商品を提供できるよう工夫しています。
 営業日の先月30日、夜明けとともに店のメンバーが集まってきました。

「これ3分の1くらいです。値段これ3000円しますよ1枚。去年すごく高かったので、そもそもモノ自体もないし」

 この日店頭に並んだのは旬のウニのほかサケ、特選パッケージの珍味にカレイやメカブなど。どれも格安で、しかも業者自慢の逸品です。

(店の営業に加わる業者は)
「かなり被害はありました。工場も流されて。色々な方から刺激を受けて助かっています」「何を求めているかわかるような気がして、商品を作ってもっと皆に買ってほしい」
目の肥えた地元の人が行列する「海の産直」に成長

開店1時間で売り切れ 復興へも確かな手応え


(鈴木良太さん)
「海の産直、きとがんせ、オープンします。どうぞいらっしゃいませ」

 開店1時間前から行列ができ始め、営業開始を30分以上早めてのオープンです。「きとがんせ」に来る客の多くは、目の肥えた地元の人たちです。その宮古の人たちがこれだけ大量に買い込むことからも、商品への信頼の高さがうかがえます。

(買い物客)
「タコとかエビとかイカ。バーベキュー用に」「安いと思います。ただ早く来ないとすぐなくなるので、これが困る」

 この日は開店から1時間ほどで、商品の多くが売り切れました。海の産直「きとがんせ」はオープンから1年近くが経ち、宮古で最もにぎわう魚屋の1つに成長しています。休む間もなく汗をかく鈴木良太さん。確かな手ごたえを感じています。

(鈴木良太さん)
「もっと宮古の水産物が、発展していけるような場所になればよい。海に携わっている自分たちも、時代の流れに沿っていっぱい変わっていきながら、お客のニーズに沿った商品を出していきたい」

 震災から6年2か月。沿岸被災地の生業の柱である水産業の復興は、新たなステージに入っています。施設の復旧もさることながら、重要なのは消費者目線、即ちいかに商品を喜んで買ってもらえるかです。多忙な中でも挑戦を続ける人たちの姿に、活気づく宮古の未来を感じました。
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