IBC岩手放送

 
岩手県宮古市田老で津波の被害と教訓を伝える「学ぶ防災」の取り組みが4月、丸5年を迎えました。「語り部」たちの地道な活動は、今や宮古市の復興の柱に位置付けられ広がりを見せています。

 先月28日、観光案内施設「たろう潮里ステーション」の開所式が行われました。

(宮古市・山本正徳市長)
「この地域、この地が宮古市、田老地区にとって有意義な場所になるように」

 行政、住民の代表とともに栄えある式典に臨んだのは、この施設を運営管理する「学ぶ防災」のスタッフです。

(記者リポート)
「これまで学ぶ防災の事務所は田老地区で、津波の被害を免れた住居を借りていました。きょうからはここ、生業の復興を目指す拠点施設で新たなスタートを切ります」

 「たろう潮里ステーション」は宮古市田老の旧市街地に移転した、道の駅の一角に復興交付金およそ7000万円を投じて建てられました。田老地区の復興を左右するにぎわいの場に、「学ぶ防災」5年の活動の集大成の場として整備されたのです。

(学ぶ防災ガイド・元田久美子さん)
「身が引き締まる思いというか」

(学ぶ防災ガイド・佐々木純子さん)
「ここからがんばるという気持ちですね」
田老での津波の歴史と避難の大切さを訴え続ける

5年間で約12万人が「学ぶ防災」を利用


 宮古観光文化交流協会の「学ぶ防災」は、田老での被災地ガイドの窓口を一本化する形で、震災翌年の2012年4月1日に始まりました。X字の防潮堤が街を囲む、田老の津波の歴史と避難することの大切さを訴えています。そして去年には震災遺構「たろう観光ホテル」の保存工事が終わり、防潮堤とホテルでの津波映像の、2つの柱をメインにメニューが組まれています。

(学ぶ防災参加者)
「言葉にできない。普段の生活では全く見ることができない」「震災の怖さとかすごく感じて」

 昨年度までの5年間の利用者はおよそ12万人。住民への聞き取りを進めて、話す内容を充実させスケジュールの管理もしてきました。

(元田久美子さん)
「事務所もない所で軽ワゴンの中でガイド4人びっしり。狭い思いをしながら」「経験した人の話は良く聞くべきだなと。今度は自分が経験したからこそ、伝える立場になったのかと段々思えるようになってきて」
宮古市では新たに補助制度を創設し後押し

語り部たちの地道な活動が、宮古市の「復興の柱」として広がる


 先月24日、学ぶ防災を紹介するプロモーションビデオが完成し、宮古市役所で披露されました。学ぶ防災の活動とともに震災当時、田老にいた関係者の証言と、アニメーションで震災当日の様子を紹介しています。たろう潮里ステーションのみで全編が見られるこのビデオ。出席者の反響は上々でした。

(試写会の出席者)
「震災当日に田老にいた者として、すごく当時のことを思い出しました」「悲しい記憶を伝えていくだけでなく、前向きな教訓として生かしていってほしい」

「学ぶ防災」には行政のバックアップが必要です。5年間、費用を支援していた国の緊急雇用創出事業が昨年度で終了し、存続が懸念されましたが、市が今年度から新たな補助制度を創設して、後押しをすることになりました。

(宮古市観光港湾課・田中富士春課長)
「防災の取り組みに生かしてほしいのが一つあります。もう一つは宮古市の本格的な復興に向けて、交流人口の拡大、地域活性化の部分で重要な観光コンテンツと考えています」
「津波から命を守る」ことと「地域の復興」を目指して新たな一歩

風化に抗い、震災の記憶を後世に伝える


 体制、場所も新たに「学ぶ防災」の2017年度、仕事始めの日。

(元田久美子さんのガイド)
「この街はどこに住んでいても、ちゃんと逃げていたら助かった命。最善の道は高い所にいち早く逃げる、1分でも1秒でも早くその選択ができることが大事なことです」

(元田久美子さん)
「これからも自分たちが色々な所に発信していって、私たちの経験したことを役立てていただけるようにご案内していきたい」

 風化に抗うように、震災の記憶を後世に伝える「学ぶ防災」。再スタートを切りました。津波から命を守るという大前提はもちろん、地域の復興も目指して、きょうも未来につなぐ取り組みが続いています。
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