IBC岩手放送

 
岩手県大槌町で遺族から聞き取りをして、震災で犠牲になった一人ひとりの人となりや、震災時の状況を記録した「生きた証」という冊子が完成しました。遺族が語った一言一言から震災の意味が伝わってきます。
「生きた証回顧録」。東日本大震災の犠牲者の、生前の歩みや遺族から寄せられた思いが、1000ページ以上にわたって綴られています。2014年、大槌町が中心となってプロジェクトが立ち上げられ、犠牲者一人ひとりの生きた証を残す取り組みが始まりました。今回は第1版として、2014年度と2015年度に聞き取りを行い、公表に同意を得られた545人の記録が掲載されていて、21日から遺族への配布が始まりました。

(朗読・煙山さんの生前)
「戦時中、女手一人で大変苦労し暑い夏、リヤカーを引きながら終戦を迎えました。88歳まで店頭に立ち、近所の方々に元気な姿を見せていました」
「回顧録」は「震災の伝承」であり「愛の証」でもあると語る北田竹美室長

「回顧録」は震災を後世に語り継ぐ「伝承」の意味も


 編集にあたった大槌町公民連携室の北田竹美室長は、回顧録は震災を後世に語り継ぐ、「伝承」の観点からも大きな意味を持つと語ります。

(北田室長)
「どのようにしてお一人おひとりが、311の時に亡くなられたり、行方不明になったかがつぶさに書いてあるので、防災の観点から忘れてはならないという意味を持つ」

 一人ひとりの生前の姿と、犠牲になった当時の状況。聞き取りは間に入ってくれた、ほかの遺族の協力も得ながら時間をかけて行われました。

(北田室長)
「ご遺族の方々は本人の思い出とか、その当時に気持ちが戻っちゃうんです。普通の状態ではないので、そこの中でちゃんと書き留めておく客観性を要求される」

(朗読・小林さん家族より)
「ボーナスをもらうとその一部を母方、父方双方の叔父、叔母、いとこにまで渡したり、お正月やお盆、お祭りのたびに母親に餅代、煮しめ代を渡したりして気遣いする子でした」
「できるだけのことはやる。健康でがんばれるだけがんばってみるよ」

(北田室長)
「生きた証の回顧録であると同時に、愛の証の回顧録であると思います」
第1版に掲載されたのは町内犠牲者のおよそ半数にあたる545人

「生きた証」を残すことの難しさ


 親から子へ、子から親へ、犠牲者一人ひとりの人柄や家族との関わりが、優しい眼差しで語られます。しかし―。

(北田室長)
「ご遺族の方が書いてない方がいらっしゃる。友人であったり会社の同僚であったり。それはなぜかというと、ご家族の方がどなたも残ってらっしゃらない。大槌町の死者、行方不明者は1285人。あまりにも大きな犠牲」

 数字だけでは伝わり切らない震災の実像が、一つひとつの言葉からあふれ出てきます。

(北田室長)
「こういうふうな形でまとめ上げるということは、多くの人の目に触れ読んでいただけるということ。それがお一人おひとりの人生が、どうであったかたが残るということ。未だに向き合えない人もいますし、整理がついていない方も沢山いらっしゃいます。書くことによって整理がついたという方もいます。様々です」

 今回、第1版に掲載されたのは、町内の犠牲者のおよそ半分にあたる545人。犠牲者一人ひとりの生きた証を書き留める作業は、町民有志を中心とした「生きた証プロジェクト推進協議会」により、今後も継続されていきます。
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