IBC岩手放送

 
岩手県大槌町の高台には、あえて「木」で作られた「碑」が建っています。「木製の碑」が伝える津波の教訓。そして、これを引き継ぐ若い世代の思いを取材しました。
 復興工事が進む岩手県大槌町の安渡地区。大槌湾から約400m。津波の到達地点だった坂の途中に栗の木でできた碑があります。
 碑にはこう刻まれています。

「大きな地震が来たら戻らず高台へ」。

 雨・風に4年間さらされ、側面には1mほどの亀裂が入り劣化が進んでいます。

 木でできた碑「木碑」を発案したのは、2013年当時、大槌高校の生徒だった吉田優作さんです。津波対策を考える中高生の集まりに参加したことがきっかけで、思いつきました。建設会社などの協力を得て、木碑はその年の3月11日に建立されました。

 木碑は朽ちることを前提に4年毎に建て替えられます。

(2013年当時の吉田さん)
「石碑では風景の一部になり、誰の目にも留められなくなってしまう」
「建て替える行事に参加することで、震災の記憶を1人でも多く共有して後世に伝えていける」
高校生たちは新しい碑に「絆 声をかけ合い思いやりも後世に」と刻んだ

「木碑」を通して高校生と地域の人たちが交流 教訓を伝える意義を確認


 4年後の今年2月25日。千葉県の大学に通う吉田さんは、木碑建て替えにあわせて帰省しました。仮設住宅の談話室には大槌高校の生徒の他、近くの住民合わせて20人以上が集いました。

 この日は、新しい木碑に刻んだ文字に墨を入れ、高校生が考えた文も追加されました。

(高校生)
「人の命を助けたいのであれば、まず、1人しかいない、かけがえのない自分の命から助けてほしいという気持ちをこめました」
(吉田さん)
「後世に遺したいと少しでも思ってもらえれば」

 木碑を通して交流を深める高校生と地域の人たち。教訓を伝え続ける意義を確認しました。

(高校生)
「地域の人と復興を進めていけたら」
(住民)
「未来の子ども達は何もわからない、津波といっても」
「これを後世にいつまでも遺して、子ども達を犠牲にしないように」
(吉田さん)
「(木碑には)4年間お世話になったので、お疲れ様という感じ」
「これからの新しい碑につなげたい」
次の建て替えは4年後、震災から丸10年となる2021年3月11日

「木碑」を次の世代へと引き継いでいく


 震災発生から丸6年を迎えた3月11日。防潮堤越しに海が見える安渡地区に吉田さんがやって来ました。

(吉田さん)
「新しく木碑を作ったんだ。あれをみんなで建てて欲しい」

 吉田さんの指示のもと、大槌高校の生徒が新しい木碑を持って坂の中ほどにある台座へと向かいます。

 次の4年、さらにはその先を見据えて、吉田さんはあえて木碑の建て替え作業のほとんどを地元、大槌の高校生たちに任せました。

(吉田さん)
「次に継いでもらえる人をどうやって見つけるかが、今後の課題になって来るんじゃないかな」

 二度と津波の犠牲を出さないためにー。吉田さんの思いは作業を手伝った高校生たちに引き継がれます。

(高校生)
「(木碑に)書いてあることを見て“逃げなきゃ”“逃げた方が良い”って後世に伝えていきたい」
「(卒業後)県外に行ってしまうので、できれば(建て替えのため)帰って来たいな」

 次の建て替えは4年後の2021年3月11日。木碑は代替わりしながら、静かに津波の教訓を伝え続けます。
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