IBC岩手放送

 
東日本大震災では多くの郷土芸能が、道具を津波で流され、存続の危機を迎えました。その危機を乗り越え、鎮魂の祈りを込めた舞を踊り続ける、岩手県大船渡市の団体を取材しました。

 大船渡市三陸町で先月開かれた、「こども郷土芸能まつり」。地域の伝統を受け継ぐ市内の子どもたちが、日ごろの練習の成果を披露しました。赤崎町の保育園児はかわいらしい鹿踊り。末崎町西舘地区の中学生は七福神の舞い。大人顔負けの本格的な演舞が観客を楽しませました。中でもひときわ目をひいたのが、三陸町越喜来の浦浜地区に伝わる、浦浜こども念仏剣舞です。ステージ手前に位牌を置いて、焼香をするという独特な踊りは人々を圧倒しました。

(観客)「感動します、本当に。みんなそれぞれのいいところを、みんなてんでん(それぞれ)に生かしているから。素晴らしいと思ってます」「剣舞やって涙出ました、感激して。みんな上手でした」
津波で流された道具が、ガレキの中から少しずつ見つかった

“次”につないでいく、それを忘れないことが大事


 江戸時代中期から伝わるとされる浦浜念仏剣舞。太鼓役が歌う「念仏和讃」に乗せ、踊り手が焼香をしていく舞は、亡くなった人を供養する意味が込められています。2006年には県の無形民俗文化財に指定されました。
 しかし2011年3月11日。津波は念仏剣舞の面や、装束を保管していた活動拠点も襲いました。かさ上げ工事が進む、三陸町越喜来の中心部。活動拠点があった場所は、更地のままとなっています。
 現在、拠点としているのがこの「浦浜民俗芸能伝承館」です。全国からの支援で、おととし3月に建てられました。

(保存会・古水力会長)「これだ、これが鞘がなくなってしまった」

 ガレキの中から見つかった、刀や面などを取り出すのは、保存会の古水力会長です。装束の全てを流され、念仏剣舞の継続を、あきらめそうになった古水会長ですが、少しずつ発見されていく道具に、心を動かされました。

(古水会長)「その一番最後に太鼓が打ちあがってるというので、それを引き取りに行ったんですけども、やっぱりこれは衣装がなくても、踊りを継続する必要があるという風に、考え方が徐々に変わってきました」

 震災後初の舞は、ガレキの中から見つかった面をつけての、百か日供養でした。

(古水会長)「衣装がなくても、やっぱり踊りが流されたわけじゃないので、心を込めて供養するという。そしてその百か日を出発点として、行動開始してきたということ」

 日本財団などの支援で、装束や太鼓をそろえた浦浜念仏剣舞は、本格的に活動を再開しました。

(古水会長)「大事なのはつないでいくっていうね、次につないでいく、そういう作業をやっぱり忘れないようにしていくということが、大事だと思うんだよね」
東京での公演に向け、子供たちの練習に熱が入る

感謝を込め、被災地の元気を伝えたい


 金曜日の夜、伝承館に子どもたちが集まります。今月26日に東京で行われる「地域伝統芸能まつり」で、東日本大震災からの復興のシンボルとして、舞を披露するため練習を重ねています。子どもたちの表情は真剣そのもの。指導する大人たちも、自分たちが教わってきたことを、子どもたちに伝えようと必死です。

(女の子)「失敗しないのはもちろん、東北がここまで元気になったんだよってことを、伝えられたらいいなと思います」
(古水会長)「まず一番は感謝を込めてね。それから被災地の元気を伝える。その辺に的を絞って、元気いっぱいやりたいと思います」

 震災を経験したことでより強くなった郷土芸能を守る心。浦浜念仏剣舞はこれからも、踊り継がれていきます。
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