沿岸の産業基盤、「養殖漁業」の今。3ヶ月余りたった被災地の現実をお伝えします。

山田町の漁港。養殖作業船が次々と港に戻ってきます。しかし、陸に揚げるのはカキやホタテではありません。

家の柱や養殖用の浮きなどです。
・・・猛烈な悪臭が襲ってきます。
 マスク姿の漁家たちが手にしているのは無数の死んだカキやホタテ。養殖施設の廃棄作業の現場です。100日経った今も続く浜の現実がそこにはありました。
養殖漁業関係者の声です。
「いつまでかかるのか分からない先が見えないです。」「(いつになったら養殖できるのかと思っていませんか)内心皆そう思っています。」「再開までの収入が無いからね結局。その何年間どうするのか」
月日が経ち、今では水揚げなど復興に向けた明るい浜の様子が多く取上げられてきたような気がします。…しかし、これらは全て海に今あるものを獲った漁の結果。「作り育てる」養殖漁業については未だほぼ手付かずの状態なのです。

「作り育てる」養殖漁業については未だほぼ手付かずの状態。

「住居も無ければ衣食住も不足している中で養殖施設への再投資は大変だろうと困っています。」(三陸やまだ漁協生駒利治組合長)
三陸やまだ漁協では現在、沿岸の他の地区と同様に漁協が船や施設を整備し組合員がグループで漁を行う「協業体」形式での養殖再開を目指しています。養殖施設はこれまでの筏から価格が安い延縄式にして経費を抑えて整備する方針ですがそれでも1億円以上かかると試算しています。
「再スタートをなんとかマイナスのスタートからゼロのスタートにするように国県町からの助成をお願いしたい。(行政からの補助が受けられないと山田の養殖は)はっきりいって終わりですね。」(三陸やまだ漁協生駒利治組合長)

津波で破壊された防波堤の撤去も未だ終わらず外海に出る事すらかなわない宮古市田老地区の中心部。

漁が出来ない漁家たちはガレキの撤去をしながら僅かばかりの収入を得ています。
「天然」ワカメの収穫が行われたばかりの田老地区。漁業の主力は全国ブランドとしても名高い「真崎わかめ」です。
 しかしこちらも養殖モノの再開の日程は決まっていません。施設の整備には山田と同じく億単位の費用がかかり、国の支援を求めています。
「本当にやろうと言う気持ちにはなっているんですが、やろうにも動けない。」(田老町漁協小林昭栄組合長)
 
 田老町漁協の小林組合長が焦るのには訳があります。来年春、養殖ワカメの収穫を行うためには「今」施設を整備する必要があるからです。

「来月の中旬にはワカメの種を取らなくてはならないものですから。時期が切迫しているので漁師はもう本当に困っています。」

そんな中、国の動きを待たず独自の支援をする自治体も出てきました。
宮古市では今月10日市内の三つの漁協に対しワカメや昆布など養殖施設の復旧整備に関わる経費のうち9分の8を市が単独で補助する、合わせて9億円近くの財政出動を決めました。
「来年結局出来ないと言う事になると来年の分の漁業者の生活の補償もしていかなくてはならない。その間漁業者はやることがない、やはり仕事の場を作ってあげないと。次々にそこから波及する水産加工場を含めて」(宮古市山本正徳市長)
被災地復興の大きな柱であるなりわいの再生。この土地で生活をし続けるためにはこの土地で仕事を持ち働かなくてはなりません。養殖で収入を得られるためワカメは一年、ホタテは二年、カキは三年です。動き出しの遅れは暮らしの基盤そのものを揺るがしかねません。スピード感を持った支援のあり方が今、問われています。
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